「ほら、美味しいもの食べれるからこのシワ止めろ」
私を見てクククと笑った咲留は、眉間を指で突っついた。
「だって、暑いしウザいし」
太陽をチラッと見上げて、次にこちらを見てる女の子達を見た。
ヒイィ....って女の子達から怯えたような声が聞こえたけど、知らない。
「分かった分かった。クーラーの効いた中に入ろうな」
私の頭をさらりと撫でると、カフェのドアを押し開けた。
「いらっしゃいませ」
鈴の鳴るような声がする。
「いらっしゃいませ」
次に聞こえたのは野太い男の声。
そんなに広くない店内は、とても賑わっていて。
あちこちから漂う美味しそうな香り。
「おう、咲留来たか」
とやって来たのは、白くて清潔なシャツに黒いギャルソンエプロンを着けた二十代と思われる男性。
さっき、いらっしゃいませって言った人だ。
「はい。予約席空いてますか?先輩」
咲留の先輩?
大学のかな?
「おう、開けてるぞ。おぉ!連れの子、滅茶苦茶可愛いじゃん」
咲留から私に視線を向けた男性。
顎髭に小麦色に焼けた肌でニカッと笑ってる。
「...あ..どうも」
ペコッと会釈する。
初めての人には警戒する私。
「でしょう、滅茶苦茶可愛いよなぁ。うちの瑠樹は」
デレデレしないでよ、咲留。
私の頭を撫で撫でしながら視線だけは目の前の男性に向いてる。
「女っ毛の無かったお前がなぁ....」
意味深に顎髭を擦りながら私を観察する男性。
この人も勘違いしてるパターンだ。
はぁ....面倒臭い。
「兄がいつもお世話になってます」
誤解は早く解かなきゃね。
「へっ?あ、兄ぃ?」
目を丸めて、どこから出してるのか分かんないぐらいの甲高い声を出した。
お兄さん、他のお客さんに迷惑だと思います。
ほら、その証拠に皆見てるし。
「はい、そうですよ。うちの可愛い妹。目に入れても痛くない。本当に可愛い」
頼むから可愛いを連発しないで恥ずかしい。
シスコン丸出しな咲留に、男性も固まってるし。



