「って言うか、並ぼうよ」
こんな場所でチラチラ見られてるのも面倒臭いし。
「あ、良い。並ばねぇ。予約してあるから」
とサラッと言った咲留。
「やるじゃん」
クイッと口角を上げた。
この暑い中並ばなくて良いなんてラッキー。
こればかりは、咲留を誉めてあげよう。
「だろ?俺って、瑠樹の為なら頑張れるから」
だから、そのシスコン発言は止めなさい。
ほら、周りの女子、ちょっと引いてる。
皆が抱いてる咲留のイメージからはこんなの想像できないんだろうね。
「予約してるなら早く行こう」
咲留の腕を引く。
「おお、だな?新藤、帰る前に電話するから適当に近所流しとけ」
私に向かって頷くと、振り返って運転手さんに指示を出した。
うちに来たときもこんな風に言ってたんだね。
なんか、運転手さんに申し訳なくなるなぁ。
「承知いたしました」
頭を下げると車を回り込んで運転席へと乗り込む運転手さん。
ほんと、忠実な人なんだね。
「ほら、行くぞ」
咲留はスタスタとお店の入り口へと歩き出す。
もちろん、私と手を繋いで。
女子がキャーキャー煩いったらありゃしない。
それでなくても暑さでウザいんだから静かにしてよね?
眉間に寄るシワを戻せなかった。



