あの日あの時...あの場所で






10分ほど車に揺られて着いたのは、お菓子の家の様な洋館。

愛らしい作りのお店の前には女の子やカップルの行列が少し出来ていた。



乗った時の様に運転手さんがドアを開けてくれたので、車外に降りたら外気温の高さにふらつきそうになった。
 

なんて暑いんだろうか。

車の中はガンガンにクーラー効いてたもんね。


「お嬢様大丈夫ですか?」

白い手袋が差し出される。


「あ、はい。少しよろめいただけです」

余計な気遣いまでさせてしまった。


「瑠樹、どうした?気分悪いか」

後から降りてきた咲留が背後から私を抱きすくめた。


その途端に黄色い悲鳴が上がる。


「「「キャー」」」

咲留の登場に色めき立つ女子諸君。


ここでも、咲留は人気者らしい。

咲留の名前をこそこそ話すのが聞こえてくる。


無駄に顔が良いと面倒ね。


キャーキャー煩いし。


「大丈夫か?」

しかめっ面の私を横から覗き込んだ咲留は、本気で心配そうにしてた。


「うん、暑さで立ち眩みを起こしただけよ。それより暑苦しいから離してくれない」

腰周りに回ってる咲留の腕をパシッと叩く。


「えぇ...抱っこしてく。倒れたら困るし」

眉をいちいち下げんな。


そして、こんな場所で抱っことか有り得ない。


どこまでシスコンよ。


「今すぐ私を解放しないなら帰る」

最終手段を使う。


「あ...それは困る。でも、本当に大丈夫か?」

パッと私を解放したけれど、心配は解けないらしい。


「大丈夫だし。心配しすぎ世、お兄ちゃん」

こちらをチラチラ見てるギャラリーの女子達の視線がウザいので、わざとらしくお兄ちゃんって言ってやった。

ほら、明らかにホッとした顔になってるし。

咲留と居るからって妹の私に敵意を向けられちゃ堪んない。


「あぁ!瑠樹がお兄ちゃんだなんて呼ぶのうつぶりだよ。うわぁ、可愛い」

ああ、無駄に喜ばせちゃった。


うんざりした顔で、抱き付こうとする咲留を避けた。


面倒臭い。