あの日あの時...あの場所で






用意を済ませて、咲留の居るリビングに戻ると部屋の隅に置いてあった帽子ハンガーから白い鍔の大きな帽子を選んで頭に乗せた。


初夏の海岸を散歩...なんてイメージの服装が出来上がる。



「おぉ、瑠樹は可愛いなぁ」

咲留は立ち上がってこちらを見ながら、顎に手を当てうんうんとおじさんみたいに頷く。


「出掛けるんでしょ?」

いつまでも鑑賞されてちゃ堪らないからね。


咲留を促して歩き出す。



「あ...おう、行こう」

慌てて後ろから追っかけてくる咲留を尻目に玄関に向かった。


鍵を開けてドアを押し開けた瞬間に、ムワッとまとわりつく熱に顔をしかめる。


暑いじゃん。

この暑さにわざわざ出掛けなくても。


しかも、結構早い時間なんですけど。





マンションの下に降りると咲留が乗ってきたであろう高級車が正面玄関前に停車してた。


ご迷惑でしょうが!

正面玄関前が、かなり広いとは言ってもさ。


ま、運転手さんが乗ってるから邪魔になれば動かせば良いんだけども。


車待たせてるなら待たせてるって言いなさいよ。

少しぐらいは早く準備したし。


「車待たせてるなら言ってよ」

隣を歩く咲留を睨む。


「あ、こいつそんな待ってねぇよ」

「はぁ?」

意味分かんない。


「瑠樹の用意があるから一時間ぐらい車流してろって言っといたし」

「あ、そう言うこと」

ずっとここにいた訳じゃないのね。

ま、それなら良いけど。


運転手さん、可哀想じゃない?


「運転手は、こう言うのが仕事だ」

私の心を読んだらしい咲留はシビヤにそう言った。

ま、そう言われたらはそうだけど。


「ほら、難しい顔してねぇで乗れ」

運転手さんが開けて待ってる後部座席へと促された。


「あ...うん」

私が乗り込むと、後ろから咲留も乗り込み、背後でドアが閉まる。


運転手さんは急ぎ足でぐるりと車を回り込んで運転席に乗り込んだ。



「新藤、カフェangelに向かえ」

咲留は後部座席の背もたれに深く身を預け運転手さんに指示を出す。


「かしこまりました」

車は静かに動き出す。


私は一先ず窓の外へと目を向けた。


カフェangelってどの辺にあるのかな?