パパとの楽しい時間は流れた。
他愛のない話に、相槌を打ちながら南部煎餅をいただいた。
パパとこんな風な時間を過ごすのはいつぶりだろうか?
いつも仕事で忙しいパパ。
でも、私の為のこんな風に時間を作ってくれる。
本当にありがたいと思う。
だけどね、この屋敷はやっぱり落ち着かない。
あの人達はもう居ないと分かっているのに、昔の思いがふとした瞬間に蘇ってしまう。
いつまでも、引き摺ってちゃいけないのに、体が覚えてる。
一つ一つは小さな嫌がらせだった。
だけど、それは私の中に大きな傷を残していた。
おばあ様が私を引き取りたいと言ってくれた時、拒否せずに着いて行く事を決めたのも、少なからずこの場所から抜け出したいと言う思いがあったからなのかも知れない。
テーブルに頬杖をついてぼんやりと目の前の湯飲みを見つめる。
私はまだ大人になりきれてない。
そんな自分が情けないと思う。
パパがこんなにも私を思ってくれてると言うのにね。
「瑠樹、お前にとってここは居心地の悪居場所だよな」
下がったパパの眉に、何とも言えない気持ちになる。
「...ごめんなさい」
目を伏せた私はまだまだの弱い。
「良いんだよ。気付いてやれなかった俺達が悪いんだ」
「...ううん、違うよ」
いつまでも引きずってしまう私が弱いだけ。
「瑠樹は優しい子だね?」
伸びてきたパパの手は私の頭を優しく撫でる。
優しくなんてないよ。
「...パパ、ごめんなさい。私...」
なんて言えば良いのか分からない。
パパを困らせたくなんてないのに、胸の奥にある蟠りがどうしても消えないの。
子供の頃に受けた嫌がらせが、こんなにも尾を引いていたなんてね。
もう大丈夫だって思ってたのに。
「いつまでも、昔の事を引きずるなんて子供だなぁ」
私は何も変われていないのかも知れないね。
浮かんだのは自嘲的な笑み。
「そんなことないさ。瑠樹は随分強くなったよ。だから、そんなに自分を責めるのは止めなさい。今も昔もお前は何一つ悪くないのだから」
「パパ...」
「さぁ、そろそろ夕飯を食べよう。マンションへ送るのが遅くなるといけないからね」
話を変えて微笑んだパパ。
ごめんなさい、こんなに気を使わせちゃって。
パパの鳴らした呼び鈴。
メイド達の手によって食事が運ばれて来る。
何時になったら、私はこの場所で昔を忘れて過ごせるようになるんだろうか。



