パパが帰ってきたのは、私が屋敷に到着して一時間半ぐらいしてからだった。
「瑠樹~ただいま。パパのお帰りだよぉ」
と広間のドアを押し開けて入ってきたパパに溜め息が漏れた。
...ちょっと、ウザい。
「あ...おかえり」
書斎から勝手に借りて読んでいた推理小説から目を上げて、素っ気なく返事した。
「ああ...瑠樹、素っ気ない」
いや、落ち込まれても。
正直、ちょっと面白い所だったんだよね。
だから、邪魔されてちょっと苛ついたし。
「...そうでもないけど」
パパを一瞥してから、丸くて白いテーブルに広げて読んでた小説に栞を挟んで閉じた。
「あぁ、その冷たさ良い感じ」
「キモい」
咲留とパパが被って見えるのは、絶対に気のせいじゃない。
「旦那様、お茶をご用意しました」
ワゴンを押しながら広間に入ってきたのは米子さん。
「ああ、米子さん、ありがとう」
パパは振り返って微笑む。
「いえ。夕飯までの口汚しにどうぞ。盛岡の財前様より頂きました南部煎餅でございます。静岡より取り寄せた緑茶と一緒にお召し上がりください」
米子さんはそう言いながら、ワゴンからテーブルに茶器を並べていく。
香ばしい匂いのするお煎餅を乗せたお皿に、目を向けた。
「美味しそう」
「はい、とても美味しいと思います」
米子さんは年齢を刻んだ顔でフフフと微笑んだ。
ああ、昔と変わらない。
パパはスーツの上着を脱いで椅子の背もたれにかけると、対面のその席へと腰を下ろす。
「学校はどうだ?楽しいか?」
「うん、女の子友達も出来た」
「そうか、良かったね。何か不便はないかな?」
「大丈夫。咲留が何かとしてくれるし。それに豪達も居るから」
「...咲留はそんな頻繁に会いに行けるのか?ったく羨ましい。大学生はよほど暇なんだな」
パパ、拗ねたように言われても困るから。
「最近は少し忙しいみたいだよ」
一応、咲留を擁護してあげる。
「...ならいいが、あいつは瑠樹の事となるとシスコンバカになるからな」
新しい言葉を作ったね。
シスコンバカって...なにさ?
思わず笑みが漏れる。



