あの日あの時...あの場所で







「確かにそれはそうかも」

クスクスと笑い出した私の頭を優しく撫でた豪。


「良かった。笑った」

と微笑んだ。


「豪?」

「公園に居る時から思い詰めた顔してたからな」

豪には見抜かれてるらしい。


「...そ、そうかな?センチメンタルしてただけだし」

誤魔化してみる。

深く追求を受けるのは困るから。


「...ま、そうしといてやる」

ポンポンと頭を叩いた豪は、何も聞かないでいてくれるらしい。

これが豪の優しさだよね。


豪はね、狼王とか言われて皆に恐れられてるけど、本当は温かくて優しい人。

私はいつもそんな豪に救われてる。


いつか、豪にそのお礼が出来たらと思う。





「ほら、着いたぞ」

離れた豪の手。

はっと視線を向ければ屋敷の門扉の前だった。


「あ、着いてる。豪、お茶ぐらい飲んでく?せっかくだしさ」

そう言って見上げれば、


「いや、もう帰る。あんま夏樹を待たせるとキレられる」

とポケットから取り出した煙草を銜えて、クイッと口角を上げた。



「えっ?待ち合わせてたの?」

そうだったら申し訳ない。


私の送りなんてしてる場合じゃなかったのかも知れない。

自然と下がる眉。



「んな顔するな。夏樹にはお前を見つけた時に少し遅くなると連絡入れてる」

豪は私の鼻を指でツンとつく。


「...良かった」

ほっとした。

あんまり迷惑かけたくないもんね。

私の勝手な行動で。



「じゃあな?行くわ」

軽く手を上げて背を向けた豪。


「うん、気を付けてね」

と手を振った。



「見送らなくても良いから、早く門の中に入れ」

振り返った豪はシッシと手を振る。


「大丈夫だし」

家の前で何かあるわけ無いしね。


「良いから入れよ。心配で帰れねぇ」

だなんて立ち止まるもんだから、渋々インターフォンを押した。


誰かに開けて貰わなきゃ入られないからね。



「はい」

聞こえてきた声に、

「瑠樹です」

と言う。


「おかえりなさいませ、お嬢様。今すぐお開けします」

言葉が終わる前に、自動で開き出した門。




「じゃぁね、豪。また明日」

振り返ったままこちらを見てる豪に手を振る。


「ああ。じゃあな」

まだ見てるし。


仕方がないので背を向けて、開いていく門から敷地内へと入った。


そこで振り返ると豪は納得した様に口角を上げてから、今度こそ背を向けて帰っていった。


ほんと、心配性過ぎる。


フフフと笑って玄関へと向かった。