見覚えのある景色の中を目的の場所へ向かってバイクを走らせる。
単独行動してる俺に不思議な目を向ける連中も居るが、次第にそれも無くなっていく。
バイクは懐かしい住宅街に差し掛かる。
ああ...この先に、あの公園が....。
何もある訳じゃねぇのに、心臓がいつもより早く動いちまう。
何も期待してんだ?
思わず自嘲的な笑みが口元に浮かぶ。
青々とした木々に囲まれたそこが見えた途端に跳ね上がった心臓。
ほんとにらしくねぇ。
少し手前でエンジンをきってゆっくりとその場所へと近付いていく。
なぜだかそうしないとダメな気がしたんだ。
くっそ....重てぇな。
エンジンを切ったバイクを押すのは、結構力が居る。
周りが閑静な住宅街で良かったと思う。
周りに人が居たらこんなのやってらんねぇからな。
「何してんだ?俺」
思わず漏れ出た。
バイクを公園の裏口に止めて、懐かしさを漂わせたそこへと足を踏み入れた。
大した遊具もないくせに、この公園はかなり広い。
遊歩道や広場、近所の年寄りにはちょうど良い散歩コースだよな。
ザクッザクッと砂利を踏み締めながら、あの場所を目指す。
瑠樹が居るはずもないのに、どうしても行ってみたいと思うんだ。
俺が切り捨てた癖に.....瑠樹を求めてる。
薄汚れた俺は瑠樹に触れちゃいけないと思うのに、この腕に抱き締めたいと欲が出る。
久し振りに訪れたここは、昔と何も変わらないと言うのに...俺だけが変わってしまった。
「...瑠樹」
愛しい名前を口ずさむ。
俺の声なんて届けちゃいけねぇのに。
さわさわと風に揺れる木々。
俺の心までざわめかせる。
夕暮れの公園にはもう誰も居ないはずなのに、俺はその姿を見つけてしまった。
ドキッと高鳴る胸。
再会したあの日とは比べ物にならないぐらい心臓が早まる。
瑠樹...瑠樹。
あの頃より少し大人になった瑠樹が悲しげな表情であのベンチに座ってた。
思わず駆け寄りそうになり、グイッと足を踏ん張った。
俺には瑠樹に声をかける資格なんてねぇ。
待ってると言う約束を破ってあいつを裏切った俺が瑠樹に掛ける言葉なんてねぇわ。
その場に立ち尽くして、ただ瑠樹を見つめてた。
あの頃.....馬鹿な俺は瑠樹を手放す事しか出来なかった。
どうして、あの手を離しちまったんだ。
握った拳に力が入る。
俺の選択は...間違ってねぇ。
そう思うのに、どうしてこんなにも苦しいんだよ。



