あの日あの時...あの場所で







「今日はバイクで出る」

風を感じたい気分なんだ、なんて透かした事は言わねぇけど今日はそんな気分。


「了解。表に用意させておく。陽史、キングの御守り頼むよ」

御守りってなんだよ?圭吾を睨み付ける。


「護衛は任せろ」

きちんと護衛と言い直した陽史は苦笑いだ


「今日の範囲は?」

俺の睨みに気まずそうに視線を外しながら陽史を見る圭吾。


「街道沿いと南との境界の辺りだ。最近、いざこざがよく起こってるからな」

陽史の言葉を聞きながら、最後の一口を摺った煙草を灰皿に押し付けた。


南とのいざこざ....か。

街道沿いから南に向かうなら、昔住んでたあの場所に近いな。

あの公園...長いこと行ってねぇけど、昔と変わらねぇんだろうか?


瑠樹と同じ時を過ごした公園。


少しだけなら立ち寄れるだろうか?なんて甘さが出る。

狼王の支配地に軽々しく足を踏み入れちゃいけねぇのは分かってるけど、公園の裏口はうちのシマに面してるから、少しぐらい良いだろう。


時間が余ったら少しだけ、あの公園へ行ってみてぇ。


瑠樹に会える保証なんてねぇのにな?


あいつを感じたくて仕方ねぇ。


俺が手放したくせに、今更だよな?


会いたいと思う資格なんてねぇのに。

もう一度瑠樹の笑顔を見たいと思っちまう。


色んな女を抱いて汚れた俺は、瑠樹に触れちゃいけないのに。


この腕に抱き締めたくてシカタナイ。


あいつは、狼王のモノなのに.....。

瑠樹が欲しくて堪らねぇ。



...チッ、なに考えてんだ、俺は。


沸いてしまった思いを紛らわす為に、テーブルの上のグラスを手に取るとグイッとそれを飲んだ。

冷たさと苦味が俺の目を覚ましてくれる。


西のキングが聞いて呆れる。

たった一人の女にこれほどモヤモヤさせられるなんてな。