階段を上りきった俺は、ソファーにドカッと座り込む。
テーブルに用意されていた煙草を一本手に取ると口に銜えて火を着けた。
肺一杯に吸い込んだそれをゆっくりと吐き出せばゆらりと高い天井を目指して立ち上る。
「キング、何か飲みますか?」
少し遅れてやって来た陽史が尋ねる。
「アイス珈琲ブラックで」
「了解しました」
一礼して階段を下りていく陽史をぼんやりと眺める。
クラブなのに、珈琲とか笑えんな?
まぁ、見廻りに参加するって言った手前、アルコールなんて飲んでられねぇからな。
「おまたせしました」
「ああ、悪いな?」
暫くして運ばれてきたアイス珈琲を受けとる。
「いえ...」
陽史は会釈すると自分の分の飲み物を手にもう一つのソファーに座った。
「あ~遅くなった遅くなった」
ダルいと頭を掻きながら階段を上がってきたのは圭吾。
俺は静かに目を向ける。
「あの女、しつこいよ。また、なんらかのアクションを起こしてきそうだから気を付けてね」
何て言いながら俺の隣に座る圭吾。
「面倒臭せぇ」
気位の高い女は、マジで質が悪いからな。
自然と殺気めいたものが出る。
「ちょ、ちょっと、そんな殺気出さないでくれよ。なんとかするからさ」
俺の眉間に寄ったシワを見ながら、圭吾は参ったとばかりに苦笑いする。
「.....」
興味を無くした俺は、圭吾から視線を逸らすと紫煙をゆっくり吐き出した。
「ま~た、興味ないみたいな顔してるし。結構大変なんだからね」
圭吾は大袈裟に溜め息をつく。
この所、面倒臭い女の処理は圭吾に任せっきりだからな。
まぁ、こいつが俺の性欲処理の邪魔を尽くしてくるってのもあるけどな。
おかげで、最近溜まりっぱなしだ。
「圭吾、今日の見廻りはキングも参加する」
陽史が圭吾に声をかける。
「へぇ、珍しい」
意味ありげに俺を見る圭吾。
「ストレス発散の為だ」
溜まったフラストレーションは、別の方法で発散すりゃいい。
見廻りに出りゃ、発散できる相手の一人や二人居るだろう。
うちのシマを荒らしに来る馬鹿は後をたたないし。
「あんまりやり過ぎないように」
と言う圭吾に、
「虫の息程度にはな?」
とゆるりと口角を上げる。
「まったく...虫の息ってなんだよ?」
呆れた様に溜め息をつかれた。



