「組のお嬢様だから、キングに易々と近づけると思ったら大間違いだ」
クスクス笑う圭吾の声を最後に、俺はその場を後にした。
「キング、今日の見廻りはどうしますか?」
圭吾の代わりに俺の側に控えていた木田陽史(キダヨウジ)が声を掛けてきた。
こいつにはいつも外回りを任せてる。
「俺も出ばる」
たまには見廻りも悪くねぇ。
「分かりました。そのように手配しておきます」
そう言って頭を下げると後ろに下がる陽史。
数人を引き連れて繁華街を練り歩きながらぼんやりと考える。
さっきの女、岩井の娘か?
聞き覚えのある名前に眉が寄る。
あんなのにまで周りをうろつかれちゃ堪らねぇな。
目的地のクラブに着くと、陽史が先回りしてドアを開けてくれる。
そのドアを潜って中に入れば、
「「「お疲れさまです」」」
俺の顔を見て、次々と頭を下げるのはうちの学校の連中。
まだ開店してねぇクラブの中は、男ばかりでむさ苦しい。
ま、昼の二時に開いてるクラブなんてねぇけとな。
俺は迷うことなく、いつもの席に向かう。
ホールを見渡せる一階上にある特別席が俺の居場所。
三人掛のソファーが二脚並んだそこへ向かうには、ガラス張りの階段を登らなきゃ行けねぇ。
俺はゆっくりと階段を上り始める。
ここに来るやつらはこの階段をシンデレラの階段なんて囁いてるらしい。
この階段を上れるのは特別な奴だけだからそう呼ばれてるらしい。
俺と圭吾、陽史ともう一人の幹部。
後は俺達に呼ばれた女だけが、この階に来ることを許される。



