あの日あの時...あの場所で








「お待ちになって」

伸びてきた女の赤いマニキュアを塗った長い指が俺の腕を掴む。

以前ならなんとも思わなかったその行動も、俺を苛立たせるだけだ。


「...触んな」

低い声が出る。


「どうしてですの?私なら相手として申し分ないと思いますわ」

ああ、これだから高飛車な女は面倒臭せぇ。


話し方からして何処かのお嬢様らしいこの女に嫌悪感を覚える。


溜め息しか出てこねぇ。



「...圭吾」

名前を呼べば、


「了解」

隣を歩いていた圭吾が女の手を俺の腕から引き剥がしてくれる。


「キングは先に行ってて、俺が後始末しておくよ」

圭吾は、女と俺の間に体を入れると女を見下ろす見据えたままそう言った。


「ああ、任せた」

俺は再び歩き出す。

今度は俺を止める奴なんて一人も居ない。



「キング、待ってください」

女の声が背後で聞こえるも、

「ハイハイ、お姉さん。いい加減諦めてくれるかな?」

圭吾の声が女を足止めする。


「退きなさい。私は岩井組の娘よ」

フッ...組関係の女かよ?

腹が座ってると想ってたけど。


「どちらのお嬢様でも関係ない。キングが排除だと言えば排除なんだよね。諦めて」

圭吾はきっとたのしげに口角を上げて女を見据えてんだろうな?