「今ので分かっただろ?女の一人ぐらい男が本気出せば、押し倒すのも連れ去るのも簡単に出来る」
「...ゆ、油断してたからだし」
とか言ったけど、豪の言うのは間違いないと嫌ってほど分かった。
「強がんな。意地悪で言ってんじゃねぇぞ?」
豪はポンと頭に手を乗せる。
大きくて優しい手には、さっき感じた怖さはもうない。
「...ごめんなさい」
分かってる。
豪が本気で心配してくれてること。
「謝んな。お前だけが悪い訳じゃねぇ。俺達と居る事でお前を危険に晒さらしてるのも事実だし、それで不自由な思いをさせてるしな」
「豪...」
「心配だから、無茶だけはすんな」
私の頭を撫でる豪の手はいつもと同じで温かい。
「うん、分かった」
自分の力を過信して、行動しちゃだめだね。
「よし、じゃあ送ってく。暗くなる前に帰っとけ」
豪は立ち上がる。
「うん、帰る」
頷いて立ち上がった。
豪はそれを見て、ポケットに片方の手を突っ込むとぶっきらぼうに歩き出した。
私は豪の後を追うように歩き出す。
豪の背中は広くて頼りがいがあるよね。
いつも、私はこの背中に守られてる。
ありがとうね、豪。
ザクザクと二人分の足音が響く。
この沈黙は嫌いじゃない。
豪の纏う空気が好きだ。
公園の入り口で、私は一度だけ振り返った。
思い出の公園。
この場所から、色んな事が始まった。
もう立ち止まるのは止めないとね?
ゆっくりでも良いから前に進もう。
朱色に染まる公園にはさよならを告げて再び歩き出す。
「豪、待って」
少しだけ先を行く豪を追いかける。
「...慌てんな瑠樹、転けるぞ」
私に手を差しのべる豪は優しく微笑んだ。
そんな私達を公園の反対側から見つめていた人が居たなんて私は気付いてなかった。
その事を切っ掛けに、急速に私の周りが騒がしくなっていく。



