あの日あの時...あの場所で







「親父さんと一緒だったんじゃねぇのかよ?」

と聞かれ、

「あ、それがパパに急に仕事が入ったんだ」

行くの嫌がってたけど、笑ったら。


「ま、仕事ならしかたねぇな?」

「だよね。だからさ、ちょっと散歩にきた。この辺りに来るのも久々だしね」

「...分からなくもねぇけど。夕暮れ時の公園とか危ねぇ」

と怒られた。


「そんなに遅くなるつもり無かったし。それに15分後には屋敷からのお迎えが来るよ」

「誘拐は5分でも出来る」

いや、真顔でそんなこと言われても。


って言うか、私が誘拐される前提なのね。


「だから、私も抵抗ぐらいするってば」

護身術ぐらい出来るからね。


「.....瑠樹」

豪の真剣な顔。


次の瞬間に私の視界は大きく変わった。


仰向けにベンチに倒れる私の視界に写るのは朱色の空と豪の顔。



右手と左肩を同時にベンチに押し付けられている。


「ご...豪?」

戸惑いに揺れる瞳で豪を見上げる。


「これでも、逃げれるか?」

豪の獲物を狙う瞳が私を逃がさないとばかりに見据える。


腕に力を込めても、足を動かそうとしても豪に馬乗りされた体は思うように動かない。


どうして...どうして、豪。



「...っ...離して..」

キッと睨み付ける私を、

「瑠樹、お前なんて簡単に押さえ込めるんだぜ?」

ニヤリと笑って私との距離を縮めた豪。

片手で私の両手を私の頭の上で拘束すると、もう片方の手をワンピースの裾から見える私の太股へと当てた。


ゾクッと粟立つ体。


初めて豪を怖いと思った。


男の顔をした豪に、私の本能が警告音を鳴らす。

煩いぐらいに高鳴る心臓。


豪が本気じゃないことぐらい、ちょっと考えれば分かるはずなのに、パニックになってた私はそれすら気付けなかった。


「...や...止めて..豪」

か細い声しか出せない自分が情けなかった。


「.....瑠樹、お前がどんなに強くても男の力には勝てねぇ」

そう言ってグイッと顔の距離を縮めた豪に、思わず目を瞑った。



ドキドキと早まる鼓動。


チュッと言う音に、目を開けた私の視界に写ったのは豪の意地悪く笑う顔。


「ククク..唇にキスされると思ったか?」

私を解放した豪は、私の手を引いて起き上がらせてくれた。


「...なっ」

豪の唇が触れた額を手で押さえながら、豪を睨み付ける。