夕暮れの空。
西から広がる朱色は、街を染めていく。
耳の側を通り抜ける風は、少し生温い。
夏の夕暮れは、ムシムシしてる。
だけど、私の足は止まらない。
向かう場所は決まってるから。
懐かしい景色の中、見えてくるのは思い出の公園。
グリーンのフェンスに囲まれたそこは昔と変わらない。
公園の入り口に設置された車避けの間を通り、足を踏み入れる。
ザクッザクッと足元で鳴る砂利の音。
夕暮れの公園には、人の姿はない。
風に揺れるブランコ、少し錆びた滑り台、小さなスコップが取り残された砂場。
あの頃と変わらない景色がそこに広がっていた。
大きな楠木の下にポツリと置かれたベンチに腰かけた。
三年前は、ここが私の特等席だった。
込み上げてくるのは懐かしさと切なさと...寂しさ。
色んな思いが複雑に絡まる。
私は今も囚われたままなのだろうか?
あの頃...私は...。
屋敷に居場所がなくて、気が付いたらいつもここに来てた。
そんな私の側に柊が居てくれるようになったのはいつからだったかな?
住む家が変わって、学校が変わって、環境が全て変わった私は馴染めなくて。
自分の殻に閉じ籠ってしまった。
ママを亡くしてすぐだったのもあって、それは日に日に拍車をかけた。
もちろん、そんな状態で友達も出来るわけもなく毛色の違う私は学校でも孤立した。
そんな時に私を庇い守ってくれたのが柊。
心を開けなくなって頑なに人と接することを嫌がってた私に、柊は何も聞かず寄り添ってくれた。
不器用でぶっきらぼうだったけど、柊の側は暖かかった。
話すようになって知ったのは、柊の家がご近所だったこと。
そして、いつしかこの場所でも学校でも柊と一緒に居ることが私の普通になってた。
どんなに辛いことがあっても、ここで柊と過ごす事で乗り越えてきた。
私達は互いにかけがえのない存在だった。
なのに.....私は柊を置いて旅立った。
あの日.....私はどうすれば良かったのかな。
あの時.....彼の腕に飛び込めたなら。
この場所に.....一緒に居られたのかな。
「柊....」
朱色の染まる空を見上げた。
朱に染められた雲がふんわりと浮かんでる。
何もかも昔と変わらないのに、私達は変わってしまったね。
苦しくなる胸を押さえた。



