「普段からそれぐらいの意気込みが欲しいですね」
呆れ顔の桜井さんに同意だ。
「煩い。さぁ早く社に行ってくれ」
桜井さんをキッと睨んだパパは運転手さんを急かした。
車は一路、ビジネス街へと向かって進んでいく。
ビジネス街でも、一際目立つ大きなビルの前に、車は停車した。
会社の社員だろうか?
数名の人達が大急ぎで正面玄関から駆け寄ってくる。
社長であるパパを出迎える為だろうか?
今どき派手な出迎えだなぁ。
こんなのしてる暇あれば少しでも仕事を進めれば良いのに、なんて思うのは私がお子様だからだろうか。
助手席から桜井さんが降りたと同時ぐらいに、パパが乗る方の後部座席のドアが開く。
「社長、お待ちしておりました」
年配のおじさんがそう言ってお辞儀する。
「瑠樹、行ってくるよ。良い子で待ってるんだよ」
パパは私に微笑むと、頭を一撫でして車を降りた。
ん、もう!子供じゃないってば。
「行ってらっしゃい」
ドアがしまる前に背中を声をかけた。
社員さん達に囲まれる様にして正面玄関への階段を上がっていくパパの姿。
さっきまで、娘にデレデレだった人だとは思えないほど凛々しかった。
「では、屋敷へ向かってよろしいですか?」
運転席からの声に、
「はい、お願いします」
と返す。
ゆっくりと動き出した車。
私は静かに目を閉じた。



