暫くして、電話を終えた桜井さんが申し訳なさそうな顔で振り返った。
パパは明らかに嫌そうな視線を彼に向ける。
「社長、申し訳ありませんが。現在進行中のプロジェクトでトラブル発生です」
「お前達で何とかしろよ」
あ~ぁ、完全に拗ねてるよ、パパ。
「アメリカ側のCEOが社長でないと話をしないと頑なに言い張ってるようです」
「...チッ..あいつか...お前が奴を抑えろ。俺の休日を潰すな。瑠樹との大切な時間なんだぞ」
...パパ、桜井さんが困った顔してるじゃん。
「...はい。それは承知しています。ですが、今回のプロジェクトも会社の社運が掛かっておりますので...」
桜井さんが悪い訳でもないのに、眉を下げた顔が本当に申し訳なさそうだし。
「んなの、知るか!俺は瑠樹と居たいんだ」
出た...パパの我が儘。
だいたい、知るか!じゃないしね。
はぁ...ここはどう考えてもパパは仕事に行くべきでしょ?
「パパ、今すぐ会社に行って。社運が掛かってるって事はパパの会社で働く人達の運命も掛かってるって事でしょ?」
「...ま、そうとも言えなくもないけど...」
歯切れの悪い言い方しなくても。
「だったら行かなきゃね。パパの会社で働く人やその家族の生活を守るのがパパの仕事だもの
」
社長はそう言う重さを背負ってるんだから。
「...はぁ...瑠樹にそこまで言われちゃ行くしかないね」
眉を下げたパパは諦めた様に苦笑いした。
「うん、行って。会社の為に働くパパが好きよ」
フフフと笑う。
「桜井、聞いたか?瑠樹は可愛いなぁ。羨ましいだろ?」
いや、だから、何を自慢してるんだか。
「ええ。とても素敵なお嬢様で羨ましいです」
桜井さんも納得しないで。
「だろ?やっぱ瑠樹は俺の娘だなぉ」
何を感心してんのよ。
「では、社長、このまま社に向かいます」
「ああ、そうしてくれ。俺達は会社で降りるが、瑠樹はこの車で屋敷の方に帰っててくれるかい?直ぐに片付けて戻るようにするから」
桜井さんに頷いたパパは私の顔を見た。
そんな懇願されるように見られたら、嫌だと言えないじゃない。
「...うん、分かった。お屋敷で待ってるから、お仕事頑張ってね」
「ああ、かんばるぞ。いつもの10倍頑張る」
力瘤を作ってみせるパパだけど、10倍ってリアルな数字だし。



