あの日あの時...あの場所で








店を出て、いつの間にかパパが呼んであった迎えの車に乗り込んだ。



「お帰りなさいませ。お食事はいかがでしたか?」

助手席の桜井さんが振り返る。


「ただいま。凄く美味しかったですよ」

有りのままに答えた。


かなり豪華なランチだったと思うし。



「それはようございました。社長も楽しい時間を過ごされた様ですね」

優しく微笑んでから、機嫌の良いパパへと視線を向けた桜井さん。



「ああ。娘と食事は実に楽しいね。いつも行われる会社関係の堅苦しい昼食とは違うな」

「当たり前ですよ、社長」

「毎日、瑠樹と昼食をとりたいぐらいだ」

真顔でそう言ったパパに、

「それは物理的に無理ですね」

ピシャリと言い捨てた桜井さん。

仕事ではパパを甘やかさない姿勢が見てとれた。


「チッ...堅物」

パパをその舌打ちはダメでしょ?


「何とでも仰ってください。社長を甘やかすとロクな事になりませんからね」

桜井さん、笑ってない瞳が怖いです。


だけど、今の会話でパパが普段から桜井さんを困らせてるのが、何となく分かった気がする。


ご苦労様です。



「桜井は酷いな?瑠樹。瑠樹との時間を取らせてくれないんだぞ?」

そんな無茶な言い分を振られても困るし。


「仕事したら良いと思う」

さらっと返した。



「あぁ、瑠樹が冷たい」

項垂れるその姿が咲留とソックリだ。


「瑠樹さんは、よく分かってらっしゃるので助かります」

桜井さんの笑顔に微笑み返す。


「パパをこれからもビシバシお願いします」

と言った辺りで着信音が車内に響いた。



「すみません」

桜井さんは私達に断りを入れて、スーツの内側の胸ポケットからスマホを取り出す。


正面に向き直った彼は難しい顔で画面をタップして電話に出た。



「...はい...どう言うことですか?...そちらで対処.....」

低い声で話す桜井さんは、苛立ってるらしくて。

チラッと隣のパパを見れば、眉間にシワを寄せて桜井さんの横顔を見ていた。


会社でトラブルが起こった感じかな?


私には入れない領域...何となく窓の外へと視線を向けた。


流れる景色をぼんやりと眺める。