あの日あの時...あの場所で







「瑠樹、お腹は膨れたかな?」

ナプキンで口を拭きながらパパが私を見た。


「うん。お腹一杯。すごく美味しかった、ご馳走さま」

頷きながら膝に乗せていたナプキンを外して四つ折に畳むとテーブルに置く。



「そうか、それは良かった。楽しい時間は過ぎるのが早いね」

フフフと優しく笑うパパ。


「そうだね。」

パパと日常の様子を話ながら食べた食事は思いの外早く進んだ。


私を飽きさせない様に、パパが色んな話題を振ってくれたお陰だと思う。


パパを嫌いじゃないけど、私はまだ少し戸惑ってしまう所があるから。


同じ時を過ごした時間がやはり少ない為か、未だにどうしてもパパと二人は緊張してしまうんだ。


それを踏まえた上で、パパは私が居心地悪く無いようにしてくれてる。


とても大きな愛情で包み込もうとしてくれてるのが分かるぶん、少しだけ罪悪感も沸く。



生まれた時からパパは居ないと思っていた私。


それがママの死後に自分がパパだと名乗り出た人が居た。


戸惑い困惑したあの頃をフッと思い出す。


心底馴染めないのも、あの頃の葛藤が邪魔してるのかも知れない。


自分の知らない胸の奥底に眠る真相心理が、どこかわだかまりを作り出しているんだと思う。


いつかパパにも、咲留に接するように出来たら良いのに。


臆病な私は、いったい何を恐れているんだろうか?





「瑠樹、どうかしたかな?」

無意識に眉を寄せた私を見てパパは心配そうに顔を覗く。


「...ううん、何でもないの」

「そうかい?なら良いが。何か困った事があったら直ぐに相談しておくれ。瑠樹の為なら何もいとわないよ」

パパの優しい瞳。

ママはこんなパパの瞳に引かれたのだろうか?



「うん、ありがとう」

頷いて微笑んだ。


必死に私のパパになろうと頑張ってくれる。


それは今も昔も変わらない。


小さい頃、欲しくて仕方なかったパパと言う存在。


手に入ったのに、どうしてこんなにも戸惑ってるのかな。


自ら作った目に見えない壁。


それの外し方を私は知らない。