あの日あの時...あの場所で







「こんな場所は苦手かい?」

その声にメニューから顔を上げれば、眉を下げたパパがこちらを見ていた。


「うん、少し。こう言う場所はあんまり慣れてないからね」

フッと口元を緩めた。


「美味しい物を食べさせたくてついここにしてしまったんだ。ごめんな?」

「謝らないでよ。別に嫌じゃないよ。それに、たまに普段とは違うものを食べるのも楽しみ」

それは本気で思う。


普段はフランス料理とか食べないし。

ま、おばあ様と行ったりしたことはあるけど。

何度体験しても慣れないよね。




「そうだったらいいが...。料理は先に伝えてあるから、好きな飲み物を選ぶと良い」

パパは笑顔を見せてくれた。


「...パパ、私、フランス語分かんないや」

苦笑いで手に持ってたメニューをテーブルに置いた。


広げたままのそれには、フランス語がびっしりと書かれてる。



「あ...そうか、そうだったな」

ワハハと笑うパパ。


高級店って、これだから困る。

英語なら分かるけど、フランス語は習ったことなんてないしね。



「パパが適当に頼んでよ」

そう言いながら手元のメニューを畳んだ。


読めないものを開いてても仕方ない。


「では、フレッシュジュースとアルコールなしのシャンパーニュにしよう」

そう言ってパパは軽く手を上げた。


すると先ほどのウェイトレスがそつない動きで現れた。


おぉ~凄い。



「ご注文でしょうか?」

「ああ、これとこれを頼むよ」

パパはメニューを指差して注文する。


「パパはお酒飲まないの?」

私に合わせる必要ないし。


「ああ。今日は瑠樹とのんびり食事を楽しみたいからね」

メニューから視線を私に向けると優しく微笑んでくれた。



「それでは、料理をお運びいたします」

そう言ったウェイトレスに、


「ああ、よろしく」

とメニューを返したパパ。


ウェイトレスがお辞儀して去っていくと、程なくして飲み物が運ばれてきた。



その少し後から料理がワンプレートずつ運ばれて来るようになり、私達は食事を始めた。