あの日あの時...あの場所で








彼女達のテーブルの上は、正直驚くほどに乱雑していて。

見た瞬間、少し時を止めてしまった。



「ほんと、お恥ずかしい限りです」

恥ずかしそうにハニかんだ母親。


「ママは料理が出来ないんだよぉ」

と娘に呆れられてるのは、如何なものかと思います。

普段の食事はどうしてるのか?と心配になった。


「もう、バラさないでよ。美保ちゃん」

お母さん、笑ってる場合じゃありませんよ。

女の子は美保ちゃんと言うらしい。


「普段はどうされてるんですか?」

失礼だと思ったけど聞くのを我慢出来なかった。


「あ、それは普段は作ってくれる人が居るんですよ」

と教えてくれたのは父親。


「あ...そうなんですか」

それは良かった。

美保ちゃんがここまで大きくなったのも頷ける。


「パパの仕事先に皆で住んでるのぉ。大勢いて楽しいんだよぉ」

美保ちゃんは楽しそう。


「そうなんだぁ。羨ましいね」

「うん」

素直で可愛いなぁ。


「じゃ、早くやっちゃいましょうか?」

周りの人達も終わってきてるし、急がなきゃ。


「はい、宜しくお願いします」

頭を下げた母親に、手取り足取り教えていく。


「ここは、こうして。これをこうすれば、簡単に出来ますよ」

「はい。あ...そうなんですね。へぇ、あ、意外と出来ます」

母親の嬉しそうな顔に、父親と美保ちゃんも嬉しそうだ。



「じゃ、同じ要領でやってみてください。美保ちゃんも旦那さんも一緒に」

私がやってしまっては、意味がないもんね。


「「はい」」

二人も母親の隣に並んで同じ作業を始める。


仲睦まじい家族って素敵だなぁ。

微笑ましくなる。




「瑠樹、なにしてんだ?」

不機嫌な豪の声が聞こえた。


「あ、豪、おかえり。少しお手伝いをしてるの。そうだ、もう時間だからソーセージをそこにある籠にあげて。すぐに戻るからお願い」

豪に話しかけた時に目に入った時計は、出来上がりの時刻を指していた。


「ああ。これにか?」

私の用意してあったボールに重ねてあった籠を持ち上げる。


「うん、そう。そこにある穴空きのお玉で掬っていれてね」

「ああ。分かった」

「火傷しないでね」

「そんなどんくさくねぇよ」

豪はゆるりと口角を上げると作業を始めた。


大柄な豪だけど、確かに器用だもんね。