豪は約束通り、昼過ぎにやって来た。
もちろん、何時もの黒い車で。
エントランスまで迎えに来てくれた豪に手を引かれて後部座席に乗り込むと、夏樹と大翔の姿が無いことに気付いた。
「あれ?二人は?」
と尋ねた私に、
「あいつらが居ねぇと嫌か?」
と質問で返してきた豪は少し寂しそうで。
「あ...ううん。そんなんじゃないよ。一緒に行くと思ってたから」
正直に答える。
送り迎えの時に豪と二人きりはあるけど、掛けた事は無かったしね。
「今日は二人だ。行きたい所は決まったか?」
口角をゆるりと上げた豪が私を見下ろした。
「あ...うん。ファミリー牧場に行きたい」
昨日、悩みに悩んで決めたのは、この街の山間にあるファミリー牧場。
乳絞り体験や、乗馬、ソーセージ作りなんかも出来るって書いてた。
「牧場?」
少しトーンの上がった声と、寄った眉間のシワ。
「...ダメ?」
やっぱ、豪に牧場とか似合わなさそうだもんね。
ヤギのミルクで作ったソフトクリーム食べたかったなぁ。
「んな、顔すんな。行きてぇならそこでいい」
豪の大きな手が頭のポンポンする。
「本当!良いの?」
凄くテンション上がるんですけど。
「ああ、良いぞ。ファミリー牧場に向かってくれ」
私に返事を返した後、豪は運転手さんに目的地を伝えてくれた。
「豪、ありがとう。地ビールとかね、手作りソーセージとか、ステーキなんかもあるんだって。それにね、ヤギのミルクで作ったソフトクリームが超人気なんだよ」
豪の腕にしがみついて、昨日仕入れたばかりの情報を伝える。
「ククク...ガキみてぇにはしゃいでんなよ」
と、言いつつも豪も少し楽しそうだし。
「だって、ワクワクするし。晴れてよかったよね」
首を傾けた豪を見上げる。
「ああ、そうだな」
微笑み返してくれる豪に胸が温かくなった。
今日は楽しくなりそうだ。
「乗馬もしたいんだ」
アメリカのお屋敷では庭で乗馬をしてたから、懐かしいなぁ。
「んな、小せぇ癖に馬なんて乗れんのかよ?」
意地悪く目を細めた豪に、
「乗馬に背丈は関係ないし」
と突っかかる。
「ほんとかよ」
何よ、その疑いの視線は!
「馬に乗るのは小さい方が風の抵抗を受けなくて良いんだからね。競馬のジョッキーは小さい人が多いの知らないの?」
馬のレースは小さい人の方が有利なんだからね。



