あの日あの時...あの場所で







カタンと音を立ててスマホをテーブルに置く。


パパを許せてない訳じゃない。

ママやパパにも、きっと事情があったんだろうと分かってるから。

柊といた頃の様な子供じゃないから、大人なりの事情や環境があるのは知ってるし。


でも、心の奥底に小さな何かが刺さったままなんだ。


生まれた事を呪っていたあの頃とは違う。


だけど、それでも......私はどこか、成長しきれてない。


情けないなぁ。



柊も今、同じ様な気持ちを抱えたままだろうか?

彼もまた母子家庭で同じ思いをして来た一人だから。

ううん、柊の方が抱える闇は深いのかも知れない。


彼の母親は男が出来ると柊を置き去りにして、家を開けることが度々あった。


数週間の時もあれば、数ヵ月の時もあった。


生活費だけを置いて彼をいつも一人にしていた。

だけど、柊は辛いと一言も漏らしたことはない。


母親は愛する男に捨てられた寂しい女なんだといつも口にしていた事を思い出す。


切なげに微笑む柊が頭に浮かんだ。



柊の母親は父親に捨てられた後、柊を身籠ってる事を知り、失意の中彼を生んだ。


彼女なりの愛情を不器用ながらも柊に与えていた。

だけど、それ以上に女としての人生を選んでしまった。


だだ、それだけだといつも悲しそうに笑ってた。


だけど、一緒に過ごすようになって、お互いに笑顔を思い出すことが出来た。


あの頃、私達は確かに幸せだった。


柊と私は見えない何かで繋がっていたのかも知れない。


今はもう.....切れてしまったモノだけれど。



柊...貴方の母親と同じ様に貴方を置いて旅立ってしまった私は、貴方を心配する資格なんてないね。


ポタリと膝に流れ落ちた涙。


この胸の苦しさは私に与えられた罰なのかも知れない。