あの日あの時...あの場所で







場面は再び変わる。


あの公園に、中学生になった私が居た。


この日、私は柊に告げたんだ。

おばあ様とアメリカへ行くことを。



小雨の降る公園。

目の前には瞳を黒に染めた柊。


寒さで震えているのか、柊の纏う冷たい空気を感じて震えてるのか分からないけど。

胸元できつく両手を握り締めた私の手は確かに震えてた。


「どうしてだよ?」

苦しげに問われる。

「...おばあ様を一人にはしておけない」

顔を俯かせたままそう返す。

一人ぼっちで暮らすおばあ様を見捨てられない。

ママが死んでしまったことに、強い後悔と罪悪感を抱くおばあ様を一人でアメリカに帰すことなんて出来ないよ。

彼女にとって私が唯一の血縁者だと分かっているのに。

それに、おばあ様は何がなんでも私を連れていくつもりなのよ。




『お前まで俺を置いていくのか』

今にも泣きそうな瞳で私を見下ろす柊に胸が張り裂けそうだった。


「...ごめんなさい...柊...ごめんなさい」

一人で生きる術を持たない私に、足掻くすべはない。


大人の思うままに生きるしかないんだ。


涙がポタポタと地面に吸い込まれていく。

それを隠すかの様に雨がその上に降り注ぐ。




「.....瑠樹...ごめん。お前が悪くない事ぐらい分かってんのにな...」

責めてごめん、と抱き締められた。



「...柊..本当は離れたくない...でも...私..」

だけど、私は行くしかなくて。


「...瑠樹...困らせてごめん」

私の後頭部を手で押さえて、離したくないと言わんばかりに自分の胸に付けた柊に答える様に、彼の背中に回した両手に力を込めた。


「...大好きだよ、柊」

今、伝えなきゃ。


「ああ、俺も」

二人の気持ちはこの時、確かに繋がってた。


小雨降る中、私達は互いに温もりをもとめるようにただ抱き合っていた。