あの日あの時...あの場所で








懐かしい夢を見た。

屋敷の側のいつもの公園で、私は一人でブランコに乗ってた。

学校帰りにランドセルを背負ったままで、ここに来て咲留の帰りを待つのが日課だったんだ。


咲留やパパが居ないと、メイド達が私を苛めるから家には居場所が無くて。


気が付いたら、何時しかこの場所に来るようになって居た。



キーコッキーコッ

足でブランコを揺すりながら、夕日が沈んでいくのを見ていた。



「また、居たのかよ」

聞こえた声に隣のブランコを見れば、幼さの残る柊が不器用に微笑んでいた。


私と同じ様に背中にランドセルを背負ったまま、ブランコに立ちと勢いよく立ちこぎを始める。


いつからだったっけ、こんな風に隣に居てくれるようになったのは。


気が付いたら側にいて、気が付いたら同じ時間を過ごしていた。


この公園でも、もちろん学校でも。


柊はいつも私の側に居てくれた。



温かくて心地の良い気持ちを教えてくれたのは、柊だったよね。


淋しさしか知らない私に、寄り添うことを教えてくれたのも柊だった。




ママが亡くなるまではママと二人だった私と、今もお母さんと二人で暮らしてる柊。


母子家庭の寂しさを知ると言う共通点を持つことが、互いを必要以上に寄り添わせたのかも知れない。

...柊の隣は心地良かった。






場面は変わる。


私は公園のベンチに座って泣いていた。

破れたハンカチを握り締めて。


ママが最後にくれたイチゴ柄の可愛いハンカチ。

若いメイドの一人が嫌がらせにハサミで切ったんだ。


悔しくて悲しくて、屋敷を飛び出した。


声を出さずに、いつまでも泣いた。



「バカ、泣きすぎだろ」

ポンポンと頭に乗るのは柊の手。


「だ...だってぇ...うぅ..」

両手に顔を埋める。


「俺が、意地悪した奴に文句言ってやるからもう泣くな」

撫で撫でしてくれる柊の手は温かい。


「柊...ぅう...ママが最後にくれたハンカチだったのにぃ..」

「チッ...程度の悪いメイドだな。ほら、行くぞ」

私の手を掴むと立たせてくれる。


意地悪をしたメイドに、自分の事の様に起こってくれる柊。



そう言えば、あの日に柊が屋敷に乗り込んでメイド達に文句を言ってくれたから、咲留が気付いてくれたんだよね。


懐かしい夢に、ゆらゆらと揺られた。