あの日あの時...あの場所で







夕飯を済ませて、紅茶を飲みながらソファーで寛いでいた私に聞こえてきた着信音。


指で画面をタップする。

「はい」

『お~い、瑠樹ぃ。お兄ちゃんですよぉ』

「...うざっ」

思わず本音が漏れでた。


電話の向こうの咲留は確実に酔っぱらいだと思う。


『る、瑠樹が俺をウザいって....』

目に浮かぶのはガーンと落ち込む咲留の姿。


あぁ、実に面倒臭い。


「何の用なの?咲留」

さっさと話を進めてやろう。


『瑠樹に会えなくて寂しかった...』

どこまで、シスコンよ。

と言うかさ、二日前には会ったよね?


「ああ...そうですか」

つい投げやりに答えてしまうのは、仕方ないと思う。


『...あぁ、瑠樹が冷たい...源治どうしよう、瑠樹が冷たい』

咲留の側には源治が居るみたいね。


苦笑いしてるのが想像できる。


『咲留、あほやな』

『瑠樹にキレられるよ』

電話越しに聞こえてくるのは、源治とちぃ君の声。


『そ、そんなことねぇよ。瑠樹はお兄ちゃん思いだからな』

二人に言い返してる咲留は、電話の相手の私を忘れてないだろうか?



「咲留、くだらない電話なら切っても良いかな?」

意味のない電話は迷惑だ。


『あ...だ、ダメだ。切らないで』

そんな泣きそうな声出されてもなぁ。


うちのお兄ちゃんは何をしてるんだろうか?



「酔っ払いの電話は迷惑なんですけど」

私の寛ぎ時間を邪魔するんじゃ無いわよ。


『ち...違うんだ』

焦ってるけど...何が違うのよ?


「....」


『咲留さん、心配しなくても瑠樹なら元気でしたよ』

咲留の背後から聞こえてきたのは豪の声。


『お前は良いよな。瑠樹と一緒に居られるし。紹介するんじゃなかった』

咲留が拗ねてる。

面倒臭いなぁ。


『.....』

ほら、豪はきっと呆れて言葉も出ないんだよ。



もう切っちゃお。


「咲留、バイバイ」


『えっ?あ....ま』

咲留の声が聞こえた気がしたけど、耳からスマホを離して躊躇なく終了と表示されてる場所をタップした。


静かになった部屋。


スマホが再び振動したけど、それを手に取らずに寝室へと向かった。



明日に備えて早寝しよう。

一人で居ると、余計な事ばっかり考えちゃうしね。