あの日あの時...あの場所で









「豪、そろそろ起きて。もう夕方だよ」

私の膝に頭を乗せて眠る豪の体を揺する。


豪が眠ってからもう三時間近く経つ。


そろそろ私を家に送ってくれなきゃ困る。


豪だって引き継ぎの件で今日も出掛けるって行ってたしね。


遅刻させちゃ不味いでしょ。



「...っん?...ふぁぁ..」

ゆっくり目を開けた豪は気だるそうに体を起こした。


「そろそろ帰るね」

「あ、もうそんな時間か。足痛くねぇか?」

私の膝に視線を送る豪。



「うん、大丈夫」

少し痺れてたけど、これぐらいどうってない。


「そうか。ありがとな、よく寝れた」

ガシガシも私の頭を撫でる豪は、寝る前よりもスッキリした顔をしていた。


「良かった」

少しでも役に立てたなら嬉しい。


豪にはいつも守ってもらってばっかりだもん。


少しでも返したい。


膝枕なら咲留で慣れてるしね。




「帰るか?」

と立ち上がると、私に手を差しのべる豪。


「うん」

元気よく返事を返してその手を掴んだ。



「車の用意は出来てます」

対面のソファーに座っていた夏樹がそう言いながら立ち上がる。


「ああ。瑠樹を送った足で待ち合わせの場所へ向かう」


「了解しました」


夏樹が恭しく頭を下げた。


豪は私の手を引いて歩き出す。


もちろん、夏樹も私達の後に続く。


視聴覚室を出た所で、廊下に屯していた数人と遭遇する。



「戸締まりをお願いします」

夏樹はいくつも鍵の付いた束をその中の一人に手渡した。


「はい」

そう言って受け取ったのは学だ。


その隣にいるのは東吾だし。


見知った顔に、少しほっとする。




「「「お疲れさまです」」」


と頭を下げたメンバーに、豪は軽く手を上げる。


「君達もキリの良い所で帰るように」

と言った夏樹。




「バイバイ、皆」

豪に手を引かれながらも私は皆に手を振った。


微笑みならが手を振り返してくれるメンバーに温かい気持ちになる。



見送られながら校舎を出た私達は、夏樹が用意した車が停まる裏門へと足を進めた。


さすがに、休みの日に堂々とヤンキーが正門を利用するのは気が引けるのか、休みの日は皆に裏門を利用するのだ。


ちょっとした、豪達の学校側への配慮じゃないかと密かに思ってる。



ちなみに、暑いからと屋上じゃなく視聴覚室を用意してくれたのは、豪のパパ。


理事長様様である。