「豪、珈琲です。瑠樹さん、大翔は放置で結構ですよ。彼は暑くなると頭が溶けるんです」
夏樹、真顔で怖いこと言うなよ。
確かに、大翔は夏になるとだらしない性生活が更にだらしなくなるけどよ。
夏樹の黒い笑みが怖えぇ。
「さんきゅ」
差し出された缶珈琲を受けとる。
「なるほど、頭が溶けるとああなるのね」
.....瑠樹も納得してんじゃねぇよ。
「ええ、そろそろお仕置きしておくので、心配要りませんよ」
あぁ...大翔はとうとう夏樹の逆鱗に触れたんだな。
この間、大翔の乱れた女関係に苦言を呈してたもんな。
あいつ、それを聞かずに遊び回ってるからな。
大翔の遊ぶ女はたまに面倒なのがいんだよ。
前にその女が俺達にまで、色目を使ってきて夏樹がキレたんだよな。
「大翔は去勢しなきゃいけないかもね?」
フフフと笑う瑠樹も怖えぇわ。
俺は二人の会話を聞きながら缶珈琲のプルタブを引き開けると、珈琲を一口飲んだ。
女遊びで思い出したが、西のキングの噂は本物だろうか?
最近、騒がれてる噂を思い出した。
どうやら、キングに本命の女が出来たらしい。
何処までが本当で、何処までが嘘かは分からねぇけどな。
本気で思いを寄せてる女が居ると言う噂が立ってる。
その話は、瑠樹の耳には入れねぇようにしてる。
そうする理由は俺自身も分からねぇけど、そうした方がいい気がしたんだ。
上加茂柊、瑠樹の幼馴染みで、瑠樹を悩ませてる男。
出来るだけ、奴と瑠樹の接触は避けてぇ。
咲留さんからも、くれぐれ言われてるしな。
だいたい、昔に瑠樹の事を捨てた奴に今さら出てこられても困る。
瑠樹は俺が大切に守ると決めたんだ。
キングに本命が出来たならそれはそれで良い。
瑠樹に関わってこねぇなら、問題ねぇしな。
だけど、噂の真意を見極めようと探りを少し入れてみたが、それらしい女はキングの周りには居ねぇ。
それ以前に、噂が流れ出した頃から遊びの女すらキングの周りから消えたんだ。
どうも腑に落ちねぇ話に苛立つ。
上加茂柊の本気の女。
......まさか、瑠樹じゃねぇだろうな?
隣で呑気にアイスを食う瑠樹を見て、胸の奥がズキンと痛んだ。
瑠樹との距離を縮められてもねぇのに、ライバルの出現と有り得ねぇ。



