あの日あの時...あの場所で






豪は本当に優しいと思う。


いつも、私を気遣ってくれてるのが伝わってくる。

学校の人達には、ぶっきらぼうで狼王とかって恐れられてるけど、全然そんなんじゃないもんね。


豪の手は大きくてとても温かいことを私は知ってる。



倉庫に居るヤンキー君達の視線はやっぱり豪に向かうわけで。


必然的に豪と手を繋ぐ私へもその視線は注がれる。

皆、強面なので怖いのよ。


出来たらあんまり見ないで欲しい。


「んな、ビクビクしてんな。来週からはお前はここの姫になるんだからよ」

こんなに視線を集めても堂々としてる豪が羨ましいよ。


「...って、姫って何?」

王凛でも、良く姫って呼ばれてるけどさ。

面倒臭くて訂正してなかったけど。


ここでも姫って呼ばれんの?



「お前は狼姫らしいからな。満場一致でお前を姫にすることになった。その方が守る名目に調度良いからな」

「はっ?」

いつからそんなものになったんだね?

豪を怪訝そうに眉を寄せて見上げた。



「ま、諦めろ。狼姫はちまたじゃお前の呼び名になってる」


「い、いつの間にそんな名称ついてたのよ」

しかも、私自身がそれを知らないってどうなの?


「知らねぇよ。俺が狼王でお前が狼姫。噂好きな奴が広めたんだろ。都合が良いからそれを利用する。今まで以上に皆がお前も守る。狼姫を決めたことで士気が随分と上がってるしな」


「...簡単に決めちゃって良いの?」

私がそんな大役を担うなんて良いのかな?


「んな、顔すんな。ここを譲ってくれるって話が出た時にうちのメンバーときちんと話し合った。その結果、皆がお前を狼姫にする事を願ったんだ」

振り返った豪の瞳は、私に自身を持てと言ってるような気がした。


皆の思いに恥じないように、私も頑張らなきゃダメだね。


守られてるばかりのお姫様になるのは嫌だし。



「分かった。私も頑張る」

皆の気持ちを無駄にしたくないもん。


「...おう」

豪は私の返事に満足そうに頷くと倉庫のドアを押し開けた。



茜色の光が私達二人を照らす。


いつの間にか日が暮れてたんだね。



海に沈んでいく茜色の夕陽。

豪はそれに眩しそうに目をしかめながらも、決意を秘めた表情をしていた。


私も決断をしなきゃいけない。


いつまでも柊に囚われてちゃダメだね。

だって、豪と柊は敵同士。

狼姫となる私が関わりを持つことなんて許されないのだから。