咲留達の話が進むのを、ただぼんやりと見ていた。
難しい打ち合わせには私の知らない事を沢山有って、飽きてきたってのもあったしね。
カフェで耳にした話を思い出す。
柊に抱かれたって言ってた女の子はとても綺麗な子だった。
不特定多数と遊んでるってのは分かってたけど、直接自分の耳で聞くのは辛いな。
忘れた人の筈だったのに...忘れ切れてないなんて、情けないなぁ。
ズキズキ痛む胸の奥。
思わず漏らしたのは重い溜め息。
梅達に迷惑かけちゃったなぁ。
メンタル弱いな、私。
もっとしっかりしなきゃダメだわ。
「瑠樹」
いつの間にか、目の前まで歩いてきた豪が私に両手を伸ばす。
「ん?どうしたの?」
話し合いの途中に何をしに来たの?
「退屈なら、近くのコンビニまで付き合えよ」
そう言って咲留もちぃ君の間に挟まるように座ってた私を伸ばした両手で抱き上げた。
「えっ?でも...豪は」
今大事な話の途中でしょ?
「心配ねぇ。夏樹が全てやってくれる」
フッと口元を緩めて私を抱き締めると皆に背を向けて歩き出した。
「豪、おい、瑠樹を連れてくなよ」
咲留の低い声に、
「退屈そうにしてるから、少し外の空気を吸わせるだけですよ。すぐ戻ります」
顔だけ振り返った豪は咲留にそう返事を返す。
「だったら、俺が」
と立ち上がりかけた咲留は、
「ここは豪に任せておけば?」
とちぃ君が肩を掴んだ。
「....チッ」
不機嫌な舌打ちをしながらも、ちぃ君の言うことに従ったらしい咲留は、ソファーに座り直した。
「瑠樹、豪に好きな物買ってもらえよ。次いでに俺のおやつも頼むわ」
ニシシと笑うちぃ君はやっぱり策士だと思う。
「あ!それやったら俺もチョコレート買ってきてや」
源治まで、調子に乗って注文を始めたので、豪は無視して急ぎ足で部屋を出た。
背後で大翔の声も聞こえたような気がしたけど、ドアが閉まったので聞き取れなかった。
「豪、ありがとうね」
あの場所から連れ出してくれて。
あのまま居たら、一人でモヤモヤ考えてばっかりだったと思う。
「いや、俺も飽きてたからな」
優しく笑ってくれる豪。
「フフフ...一緒だね」
と笑う。
豪の気遣いだってことは分かっていたけど。
「...ああ」
口角をクイッと上げて階段を下りようとした豪に、
「ここで下ろしてよ」
とお願いする。
毎回ダッコ移動は困るのよ。
「分かった」
階段の踊り場に私を下ろしてくれた豪は、私の手を引いて階段を下り始めた。



