あの日あの時...あの場所で







「ま、瑠樹が無事で良かったやん」

源治は煙草を銜えて此方を見るとニヘラと笑った。


「そうだな。うちの弟が焦る姿も見れて楽しかったし」

とちぃ君は豪を見てニヤニヤ笑う。


もちろん、豪はそんなちぃ君を威嚇したように睨み返すのだけど、ちぃ君にダメージはない。


皆に、余計な心配をかけちゃったんだなぁ。

柊の噂話を聞いただけで動揺するなんて、情けないね?

忘れた過去の筈なのに...本当私は前に進めてない。


「...瑠樹、何があったのかは聞かねぇ。でも一人で抱え切れなくなる前に俺を頼ってくれ」

私の頭を優しく撫でながら咲留は顔を覗き込んでくる。


優しいお兄ちゃん...ありがと。

だけど、言えない。

咲留も苦しめてしまいそうで怖いよ。


「...んっ...ごめんね」

曖昧な返事を返した。


柊の事は自分自身の中で上手く消化しないといけないと思うんだ。


柊が私を忘れてしまった様に、私もまた彼を忘れなきゃダメなんだと思う。


どんな理由で私を見限ったのかを知りないなくと言えば嘘になるけど。

今の私にはそれを知る術はない。


ううん、今さら知っても何も変わりはしないんだ。




「さ、湿っぽいんはここまでにして、話の続きしようか」

灰皿に煙草を揉み消しながらこっちをチラッと見た源治は優しく微笑んでくれた。


源治、ありがとう。

私の為の話を逸らしてくれて。


こんな時ね、源治の明るい関西弁には助けられるね。


「そうだね。豪も帰ってきた事だし話を詰めようか」

源治の言葉に頷いたちぃ君は豪を見る。


「ああ、進めてくれ。抜けて悪かった」

ぶっきらぼうに返す豪。



何か大切な話でもしてたのだろうか。


それを中断させたのは申し訳ない。


迷惑なんてかけたくないのに、私はいつも皆に迷惑をかけちゃうね。


不安げに咲留を見上げた。


「んな顔すんな。別に誰にも迷惑なんて掛かってねぇ」

ああ、咲留は何も言わなくても分かってくれるね。


「そうやで?瑠樹はな~んも心配することあらへん」

源治ありがとう。


「そうそう、瑠樹は俺達の可愛い妹のだからねぇ」

ちぃ君が良し良しと頭を撫でてくれる。


「あっ!千景、触りすぎ」

パシッとちぃ君の手をたたき落とすのは、もちろん咲留で。



「咲留といい豪といい、そんな顔で睨んでたら瑠樹に嫌われるからな。なぁ~瑠樹」

咲留と豪をチラ見してから、私に向けて優しく微笑んでくれたちぃ君。