あの日あの時...あの場所で











カラオケボックスを出た後、豪に連れられてやって来たのは夜叉の巣窟。


「着いたぞ」

と言われて、


「ここ...って..」

車窓から夜叉の巣窟をぼんやりと見上げた。


「ああ。咲留さん達の溜まり場だ」

そう返事をくれた豪は運転手さんが開けてくれたドアから外へ出ると、


「瑠樹」

と名前を呼んで車内を覗きながら私へと手を差し出した。



「...あ、うん」

その手を取って、車の外へと出る。


前に来た時と同じように倉庫の前にはヤンキーチックなメンバーが溢れてて。


こちらを見ていた。


いや、正しくは豪を見ていた。


頭を下げる人や挨拶をする人。


豪はここでも王者らしい。



慣れた様子の豪に手を引かれて、倉庫の中へと向かっていく。



どうしてここに来たのだろうか?


咲留に私を引き渡す為?


そんな雰囲気でもないんだよねぇ。



「瑠樹、怖くねぇか?」

周囲を囲む強面なメンバーを見渡して私に声を掛けてくれる豪。


「あ、うん。大丈夫」

咲留と何度か来たことあるし。


豪は優しいね。


やっぱりお兄ちゃんみたいだ。



「ならいい」

豪は口元を緩める。


その様子を見ていた周りの人達がザワザワする。



「狼王が笑ってる」

「狼王が優しい」

「おいおい、今の見たか?」


いやいや、豪を何だと思ってたのよ。


豪はいつも優しいからね。


思わずクスッと笑ってしまう。


「どうかしたのか?」

と豪に見下ろされて、


「だって、皆が思ってる豪と私の知ってる豪のイメージが違いすぎて笑えた」

「フッ...俺は非情な奴だと思われてるからな。ま、実際そうだし」

「嘘ばっかり。豪は凄く優しいじゃん」

「瑠樹限定な」

空いてる方の手を私の頭にポンと乗せた。


ちょっと、ドキッとしたじゃん。


豪は色気が有りすぎるよ。