バタン
勢いよく開いた部屋のドア。
ビクッと肩を揺らして私達4人がそちらに視線を向ければ、そこには少し息を切らした豪が居て。
「...瑠樹」
涙に濡れた私の瞳を真っ直ぐに見つめて名前を呼ぶと、ズカズカ私の前までやって来た。
「...豪」
そんなに優しい瞳で見ないで。
泣き顔を見られたくなくて俯いた。
「も、森岡君...あの今は..」
と言いかけた梅を無視しで、豪は私へと両手を伸ばすと両脇に手を入れて軽々と抱き上げた。
「瑠樹...俺の居ねぇ所で泣いてんな」
いつもの縦抱きでギュッと抱き締められた。
豪の苦しそうに吐き出された声に私は何も言えなかった。
「.....」
どうして、豪は私をこんなに大切にしてくれるのだろうか。
「悪いがこいつは連れていく」
梅へと視線を降ろした豪。
「え、ええ、分かったわ」
「瑠樹の荷物は夏樹に渡してくれ」
それだけ告げると豪は歩き出す。
「み、皆、ごめんね。先に帰るね」
豪に運ばれながらも、何とか声をかけた。
「気にしないで」
梅が優しく微笑んでくれる。
「無理しちゃダメよ」
桃子が心配そうにこちらを見る。
「寂しくなったら電話して」
自分のスマホをふりふりする楓。
ほんと、三人は温かいね。
「ありがと」
それだけ言って豪の肩に顔を埋めた。
涙がまた出ちゃいそうだったんだ。
私の涙腺は壊れたのかも知れない。
豪に抱かれて部屋を出ると、私達と入れ換えに夏樹が部屋へと入って行くのが見えた。
私を抱き上げたまま歩く豪はやっぱりここでも注目の的で。
カラオケボックスの客の若者達は、何事かと街の支配者の動向に関心を寄せていて。
いつもの事ながら面倒臭い。
泣いた顔なんて見られたくないので、豪の肩に顔を埋めたままでいた。
カラオケボックスを出ればそこには車が横付けされていて。
豪は私を抱いたまま躊躇なく乗り込んだ。



