あの日あの時...あの場所で






心を痛めながらも柊と離れた私。


私の帰りを待つと言ってくれた柊の言葉を信じて、アメリカで暮らした。

渡米して暫くは、互いに頻繁に連絡を取り合った。


だけど、柊からの連絡は次第に途絶えがちになっていき、半年が経つ頃には完全に無くなった。

柊のメアドと電話番号も使えないものに変わるのは早かった。

私はきっと、柊に見限られたんだと思う。


遠くに離れている私よりも、側にいてくれる大切な人が出来たのなら仕方ないと諦めた。


元々、私達は形のある関係でも無かったしね。


咲留からもいつしか柊の話題が無くなり、私は忘れた振りをした。

締め付けられる程に苦しい思いは胸の奥に封印した。


もう柊に会うことがないのならと、私は一年が過ぎてもおばあ様の側で過ごす事を決めたんだ。

もちろんアメリカに残る事を決めたのはそれだけが理由じゃないけど。


共に暮らしたおばあ様はとても優しくて素敵な人で、この人をまた孤独の中に戻すことなんて出来ないと思ったから。


アメリカに来て三年が経った時、おばあ様は交通事故でこの世を去った。


私が日本に戻ってくる数カ月前の話。


おばあ様の葬儀と資産を整理して、パパに誘われるままにこの街へと帰ってきたんだ。





全てを話終えた私はゆっくりと深呼吸した。

カラオケボックスの一室は、静けさに包まれててた。


桃子は静かに涙を流していて、楓や梅も何とも言えない表情でこちらを見ていた。


「しんみりさせてしまってごめんね」

三人は優しいからきっと感情移入してくれたんだよね。



「ううん。よく頑張ったね、瑠樹」

隣に座ってた梅が私を抱き締めてくれた。


とても温かくとても優しい手だった。



「そうだよ。一人でよく頑張ったよお」

楓が泣き出した。

そんなに目を擦ったらマスカラが落ちて大変な事になるよ。

「...ぅっ..瑠樹..く、苦しかったね」

桃子は泣きじゃくり過ぎ。


だけどね、私の為に心を痛めてくれた三人を見て、胸が温かくなったよ。


知り合って日が浅いのに、こんな風に私を思ってくれる皆が大好き。


「ありがとう。桃子、楓、梅。私は三人が居てくれたら強くなれそうだよ」

そう、強くならなきゃ。


柊が前に進んでるのに、私だけが立ち止まってる訳にいかないよね。