あの日あの時...あの場所で






渋るキングを引き連れて、何とかチェックインした俺を誰か誉めて!


10畳ほどの和室の部屋に通された俺達。


部屋に入ったキングは迷うことなく障子を開けると、窓際に置かれていた藤のリクライニングチェアーを見つけてそれにドカッと座り込んだ。


その視線の先に広がるのは、窓ガラスの向こうにある手入れされた日本庭園。




「こちらは、我が旅館の名物です。お茶と一緒に召し上がってくださいね」

淹れたての日本茶と一緒にテーブルに置かれたのは、和紙に包まれたお饅頭。


「温泉饅頭ですか?」

俺は中居さんに尋ねる。


「えぇ、そうです。この辺の土地で取れた小豆を使用してるんですよ」

優しく微笑みながら丁寧に説明してくれる中居さんは中堅どころだろうか。


「へぇ、そうなんだ。キング、食べる?」

キングに話を振るも、完璧に無視される。


うん、分かってたけどね。


「フフフ...お友達とご旅行ですか?」

キングを見て微笑んだ中居さんは、俺へと視線を向ける。


「ええ、そんなもんです」

と答える。


「そうですか。海水浴場も近くにございますし、この町を楽しんでいってくださいね」

「えぇ、そうさせて貰いますね」

「はい、ぜひ。では、夕飯は7時でよろしかったでしょうか?」

「それでお願いします」

「了解いたしました。では、失礼いたします」

立ち上がった中居さんは丁寧に頭を下げて部屋から出ていった。



静かになった部屋。

キングは黙ったまま庭を眺めたままで。


お姫様の事を考えてるんだろうか?


あんなにお姫様を欲した瞳をするくせに、それを拒絶するキング。


何もかも投げ捨てて、彼女を求めれば良いのに。

そうすれば、キングは生きる気力を取り戻してくれるんだろう?



.....ま、当事者の二人にしか分からない事もあるんだよな。


それは分かってるけど.....。


無気力で、無茶するキングをこの三年見続けてきた。

だからこそ、キングを引き上げてくれる存在をずっと探してきた。


ようやく見つけたその存在を、易々と見逃せやしないよ、キング。



俺はキングに怒られても、お姫様と接触する。


そして、可能性を探りたいんだ。


彼女がキングを拒絶するなら、無理強いをするつもりはない。


お姫様を苦しめるつもりはないからね。


だけど、俺は思うんだ。


彼女には真実を知る権利があると。