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「あ~ぁ、いちゃついてるねぇ。見る?」
せっかくバイクを飛ばしてきたのに、もうくっついちゃったとかないよね?
隣でかなり不機嫌に顔を歪めるキングに双眼鏡を差し出す。
「...チッ、見ねぇよ」
あらら、完全に拗ねてる。
俺はさっき海の家で買ったイカ焼きにかじりつく。
しっかし暑い。
海の家の背後にある少し小高い丘から海水浴場を眺める俺達は、水着姿じゃない。
水着姿で、気持ち良さそうに水遊びしてる人達が羨ましい。
狼王とお姫様は楽しそうに浮き輪でプカプカしてるのにさぁ。
ってか、お姫様の水着姿、ヤバイんですけど。
あんなに可愛いなんて反則でしょ?
「俺達も水着買って泳ぐ?」
なんて聞いたら、
「.....」
無言のまま睨まれた。
おぉ、怖。
無理矢理ここまで引っ張ってきた感じだしなぁ。
その上、あれを見せつけられたら...。
ま、機嫌も悪くなるよな。
でもさ、何か行動を起こさなきゃいけない気がしたんだよね。
キングの抱えてきた悲しい過去を聞いたらさ。
お節介だと言われても、二人は一緒にいた方がいいと思うんだよね。
だから、狼王のモノになっちゃう前に、どうしてもお姫様に接触したい。
彼女が何も知らないままだなんて、絶対にダメだ。
「帰るぞ、暑くて居てられねぇ」
デニムのポケットに片手を突っ込んだキングが、シャツの胸元にあるポケットから煙草を一本取り出してそれを銜えると100円ライターで火を着けて歩き出した。
「あぁ~待って待って」
奇声に近い声を出してキングの背中を追い掛ける。
来てすぐ帰っちゃ意味ないんだって。
俺は警戒の薄くなる機会を狙って、お姫様に接触したいんだから。
普段は狼王達の警戒が強くて、迂闊に近付けない状態みたいだし、こんな絶好な機会逃せないよね。
「キング、ここ良い温泉があるんだって。泊まりの予約入れておいたから、あそこに泊まろ」
出掛ける前にネット予約しておいたんだよね。
「はぁ?」
何してんだって顔を向けたキングは、俺の指先へと視線を移動する。
少し向こうに見える立派な門構えの日本旅館。
「ほらほら、行こ」
俺は駆け足で道路沿いに停めてあったバイクに飛び乗ると、キングを手招きした。
煙草をふかしながら、気だるそうにやって来るキングはあまり乗り気じゃない。
悪いけど、強行しちゃうもんね。



