あの日あの時...あの場所で








誰かが用意してくれた可愛らしいハイビスカス柄の大きな浮き輪に掴まって、プカプカ遊泳中。

既に私は足が届かない。


浮き輪を掴んでくれてる豪は、まだ余裕で足が届くみたいで、ちょっとムカつく。


ここまで身長差を見せつけられるとは...。


「何ふてくされてんだよ」

しかも笑われた。

「フン、足が着くからって余裕な顔しちゃってさ」


「別にしてねぇよ...ククク」


「ほら、その噛み殺した様な笑い方がバカにしてる」

向かい合わせになって浮き輪を片手で掴んでる豪を睨み付けた。


「それ、被害妄想だろ」


「ち、違うし」

大きな浮き輪に両手で必死に掴まりながらそっぽを向く。


って言うか、浮き輪も大きすぎだし。


油断して手を離したりすると、たちまち私は海中へ沈む。


海は楽しいけど...実はカナヅチなんだよね、私。

水に顔を浸けるのが嫌いな人なんですよ、ハイ。


「まぁまぁ、拗ねてねぇで楽しめ。危なくねぇ様に浮き輪を支えててやるから」

豪は子供をあやすように私に声をかける。


「...分かった。絶対に離さないでよね」

と言いながら豪を見る。

確かに拗ねてても楽しくないので、そこはヤッパリ海を満喫したいので楽しむことにする。


「これで良いだろ」

豪は浮き輪に胸板を押さえ付ける様にしてもたれかると、両腕をしっかりと浮き輪に巻き付けた。


「...うん」

急に近くなった距離に、ちょっとドキッとした。

ほら、豪って無駄に美形だから。


ほんと、綺麗な肌してるよね。

男の癖に、このツルツル羨ましいんですけど。


せっかくなので近距離に居る豪を観察してみる。


「んだよ?ジロジロ見んな」

豪、耳が赤いのは気のせいだろうか。


「だってさ、豪が綺麗だから思わず観察しちゃった」

正直に話してみた。


「なっ...綺麗とか言われても..う、嬉しくねぇし」

あっ、豪が照れてる。


「フフフ...だって綺麗は綺麗だし。豪って本当、美形だよね」

からかいついでにそう言って微笑んで、グイッと距離を詰めた。

ちょっとした出来心。


「...っ..おまっ...近けぇよ」

女嫌いの豪は、やっぱり免疫が無いらしく。


あまりに近い距離にアタフタする。


豪の可愛い一面を垣間見た気がした。


こう言う所は、咲留とは少し違う感じだね。