あの日あの時...あの場所で








「じゃ、着替えたら迎えに来る」


「うん、待ってるね」


「ああ、気を付けろ」

私と頭を優しく撫でて、豪は隣の部屋へと入っていった。


「部屋の真ん前で何に気を付けるのよ」

フフフと笑ってドアノブを押し開けた。


白を基調にした明るい部屋が視界に広がる。


オーシャンビューの大きな窓から射し込む日射しに目を伏せた。


こんなに自然光を取り込めるなんて素敵な部屋。

外観も素敵だったけどね。


ここに到着して、初めて知ったのだけど、ここは豪の叔父さんの別荘らしい。


白亜の洋館、そんな佇まいのここは10数部屋ありそうなほど広い作りで、ちょっと驚いた。




「この部屋を独り占め出来るとか、得した気分」

白い壁紙に白い床、大きなダブルベッドにドレッサーと、一人掛けのソファーセット。

ちょっとした高級ホテルだ。


テーブルに肩から外したポーチを置いて、窓際へと歩み寄った。



パノラマに配置された窓からは彼方に広がる海と、伸びる白い砂浜が見下ろせた。


海水浴客やパラソルが点在するそこに胸が踊る。

開けた窓から漂ってくる潮の香りに頬を緩めた。


「さ、早く着替えなきゃね。豪が来ちゃう」

景色に見とれてる訳にはいかないわ。


部屋の中央に戻ると、先に運ばれてたボストンバッグを開けて、昨日の買ったばかりの水着とパーカーを取り出した。



手早く着替えて、金髪の髪を耳の後ろで二つに括った。


ピンクのリボンの付いた白い麦わら帽子を被る



パーカーを羽織った辺りでドアがノックされた。


「は~い」

と返事すれば、ガチャッとドアが開く。


「おい、鍵閉めとけよ」

勝手に開けて入ってきた癖に、豪は文句を言う。


「あ...忘れてた」

本気で忘れてたし。

部屋の凄さに飲み込まれて鍵の事なんてスポッと頭から抜けてたんだもん。


「はぁ...着替えの途中で誰か入ってきたらどうすんだよ」

眉間にシワを寄せた豪が側までやって来て、呆れた顔で私を見下ろした。


「大丈夫だったし。それに豪以外来ないでしょ?」

ムゥゥと口を尖らせた。


「分かんねぇだろうがよ」


「分かるし」

だってさ、この別荘に居るのって豪の知り合いばっかりだしさ。

私にちょっかい掛けようとする人なんて居ないでしょ。