あの日あの時...あの場所で








「キ~ング、ボーッとしすぎ。灰落ちるよ。」

パンと叩かれた背中。

「.....」

ジロリと圭吾を睨んでから、銜えていた煙草に目を向けた。

圭吾の言うように灰と化した煙草は今に落ちそうになっていて、急いで灰皿に揉み消した。


「昨日から変だね。あの女の子のせいかな?会いたくて仕方ないって顔してない?」

含み笑いをする圭吾。


あの後、何も聞いてこなかったから放っておいたけど、やっぱりこいつがそのままにしておくことなんてねぇよな。


「...関係ねぇ」

もう、あいつとは関わるつもりはねぇし。

今さらどんな顔して会えるって言うんだ。

昨日は偶然会うことが出来たけど、あんな悲しそうな顔させちまう事が分かってんのに瑠樹に会いたいだなんて、口が避けても言えるかよ。



「あれれ?本当にそう?」

あぁ...こうなった圭吾はうぜぇ。


何かを企んでる顔してる時が一番面倒だ。

だから、しらを切りと押すしかねぇ。


「...ああ」

興味のない振りをして視線を食堂の喧騒へと向けた。

楽しげに食事をする生徒達の姿がそこにある。

友達同士、カップル色んな連中が悩みもなさそうに笑ってる姿に吐息が漏れた。


あんなことがなければ、俺もあんな風に瑠樹と笑いあってたかも知れねぇのに.....。



「ククク...悩ましきキングに情報提供しましょうかね」

横を向けば隣で圭吾がやたらと楽しそうにしていて。


マジでうぜぇ。


「んだよ?情報って」

怪訝そうに眉を寄せる。


「もちろん、狼王の寵姫に関してだし」

得意気に顎をクイッと上げた圭吾をキッと睨み付けた。 


「...聞きたくねぇ」

狼王のモノになった瑠樹の情報なんて知ってどうなる。


確かに...圭吾にあの女嫌いで有名な狼王が猫可愛がりする寵姫が出来たと聞いて、面白半分に興味を持った。

だけど、それが瑠樹ならば...何も聞きたくねぇ。

何も知りたくねぇ。


この胸の内が燃え上がるような思いにも気づきたくねぇんだよ。


「まぁまぁ、そんなこと言わないで。中々面白い情報だし」

圭吾はそう言って頬杖をついて俺を見た。

その瞳は悪戯に歪んでる。


はぁ...こうなった時のこいつは面倒臭せぇ。


俺は興味なさげに圭吾から視線を逸らした。