「わざわざ出てくんなよ、千景」
ちぃ君を見た咲留が不機嫌な声を出す。
森岡千景(モリアカチカゲ)咲留の幼馴染みで悪友。
咲留の妹の私も良く可愛がってくれた、気さくなお兄さんである。
「んだよ?慌てて飛び出していった癖に、中々帰ってこないから見に来てやったんだろ?」
恩着せがましく言われた咲留は、
「頼んでねぇよ」
とやっぱり言った。
フフフ、昔からこんな感じなのよね、二人は。
「咲留く~ん」
甘ったるい声がした。
誰だ?
ってか、咲留の顔が激しく歪んだんですけど。
「...チッ、まだ居やがったのか?」
嫌悪感丸出しだし。
私は咲留に縦抱きされたまま成り行きを見守るしかなさそうだ。
「クハハ...態度違いすぎだろ?」
ちぃ君が爆笑してる。
「うっせぇよ!行くぞ」
咲留は倉庫へ向かって歩き出す。
さっきの甘い声の人と対面することになる訳で。
ちぃ君よりも少し離れた位置にいるケバケバしいお姉さんが目には入る。
睫毛盛りすぎでしょ?
笑いそうになった。
だいたい、これ見よがしに肌の露出多すぎでしょ。
パンツの見えそうな短いスカート。
彼女は自分の足の太さを分かってないらしい。
私の事を見てもちろん眉を寄せて、嫌悪感を丸出しにしてくるわけで。
超面倒臭い。
咲留の女関係に巻き込まれるほど嫌なものはない。
ってか、咲留趣味変わった?
あれはダメでしょ!
化粧取ったら絶対に別人になるよ。
「勝手に妄想してんなよ?あんなの相手にしてねぇぞ?」
私の顔から考えてる事を読み取ったらしい。
「なら、良かった。いくらなんでもあれはお姉さんとは呼べないし」
クククと笑う。
女を元々寄せ付けない咲留があんなアバズレを、相手にするわけないだろうとは思ったけどね?
「千景のナンパした女に勝手に引っ付いてきた女だ。あいつ、臭くてかなわねぇんだよ。」
心底嫌そうな顔をした瑠樹。
「そりゃ面倒だね。」
他人事だし、私は困らないけど。



