あの日あの時...あの場所で






「豪のば~か!女子に向かってデリカシーの無い事を言う奴は10センチぐらい縮んじゃえ」

ふんと顔を背けて、ミルクワッフルを頬張る。


折角、人が機嫌良く食べてるのに余計な事言わないでよね。



「くはっ...何だよ、その地味な呪い」

お腹を抱えて笑いだした豪。


「...っ..地味な方が呪いが掛かりそうな気がするのよ。豪の縮んだ上に、タンスの角に小指をぶつけたら良いんだ」

あれ、地味に痛いしちょうどいい。


「見た目外人のお前からタンスとか言うキーワード聞くと笑える」

豪の奴はあくまで笑うらしい。


普段、こんなに笑わない癖に笑いすぎだっつうの。


「何、今日は笑い死にでもするつもり?」

そんなにウケるとこ言ってないんだけどなぁ。


「瑠樹がいつも以上に面白いすぎんだろ?」

そんな笑い転げるほど、面白いのか謎だ。



「...意味分かんないし」

いつも以上に面白いとか、芸人でもないので喜べませんけど。



何となく視線を感じてふっと向ければ、バックミラー越しに運転手さんと目が合った。


.......口元緩んでるよね。


慌てて逸らされた視線、平常心を装う運転手さん。


豪だって、こっちを見てクククと笑ったままだし。


ま、楽しいから良いかな...。


この雰囲気嫌いじゃないし。


私の浮かない心も少し浮上してきた気がするしね。


折角のお泊まりなんだもん、楽しまなきゃ損だよね。


テンションあげてこ!

 

豪に向かって意味の分からない呪いを何度か吐きつつ、自分のテンションコントロールも頑張った。



せっかく皆が私を思って企画してくれた海旅行。


昨日の再会引きずられたままじゃ駄目だもんね。

豪達と過ごせばきっと柊なんて忘れちゃう。


そう自分に言い聞かせた。
 


窓の外は次第に海の見える景色へと移り変わっていく。


窓を少し開ければ、潮の香りまで漂ってきた。


「豪、豪、海だよ」

首だけ振り返って豪を見る。


「大声出さなくても聞こえるっうの」

豪は瞑っていた目を面倒臭そうに開けるとこちらを見た。



「だって、久しぶりでうれしいもん」

あ、キモ...もんとか言っちゃったし。


「ふっ、やっぱガキだな?」

嫌みったらしく言わないでよね。