あの日あの時...あの場所で







「...チッ、うぜぇな」

たぶん、色目を使ってくるお姉様達の事。



だって、彼女達、楽しげにこっちに向かって歩いてくるんだもん。


こんな不機嫌な豪に声を掛けようだなんてお姉さま達はチャレンジャーだ。



「すみませぇ~ん」

豪の前まで来たお姉さん達の一人が声をかけてきた。


道を塞ぐ様に正面に立つものだから、私達も止まることになる。


「.....」

はい、豪は不機嫌丸出しで彼女達を見下ろす。



「あのぉ~お一人ですかぁ?」

うっわ!キラキラ目で豪に声かけた。


あ、やっぱり私気付かれてない。


そんなに小さいのかな?

ちょっと落ち込む。



「瑠樹、お前が後ろなんて歩いてるから、迷惑なのが近寄ってきたじゃねぇかよ」

豪は声を掛けてきたお姉さんじゃなくて、後ろに居る私にキレた。


いやいや、私のせいじゃないでしょうよ。


「理不尽だ...」

豪を見上げて呟いた。



「えっ?」

「あの、他にもいらっしゃるんですか?」

「えぇ~嘘ぉ」

お姉さん達は戸惑い出す。


それでも、豪はオール無視。


「面倒臭せぇから隣歩いてろ」

さっき買った品物の袋を片手に纏めて持った豪は私の腕を掴んで前へと引き出した。



「んもう、引っ張んないでよ」

唇を尖らせて豪を睨み上げる。


「キスされてぇのか?」

はっ?いやいや、どんな勘違いよ。


「さ、されたくないし」

慌てて視線を降ろしたら、口をあんぐりと開けて固まったままのお姉さん達が視界に入った。


あ、まだ居たんだ。


「クッ...そりゃ残念」

私を見下ろしたまま嘲笑する豪に、お姉さん達は頬をピンクに染める。


残念なんて思ってないくせにね。



「すみません。私達もう行くんで退いてもらって良いですか?」

前に立ちはだかられたままとか迷惑。


「あ...はい、ごめんなさい」

一人のお姉さんがそう言うと、三人はすぐに退いてくれた。


「ありがとう」

ニッコリ微笑んだ私の手を掴み直すとお姉さん達を一度も見ることなく歩き出す豪。


フフフ...ほんとに、無愛想だよね?


ちょっとでも笑えば、今よりもモテモテになるのにね?




「あの子可愛い」

「お人形みたいだったよね?」

「うんうん、あの子みたいなのを美少女って言うのよ」

お姉さん達、内緒話はもう少し小さな声で話した方がいいと思いますよ。



「...チッ」

豪は聞こえてきた声が気に入らないらしい。


「でも、彼氏、溺愛してたよね?」

「あんな瞳で見つめられたい」

「「「だよねぇ」」」


キャーキャー騒ぎだしたお姉さん達の声を耳にしながらその場を後にした。