あの日あの時...あの場所で









「ちょっと、豪」

何勝手に注文してのよ。

抗議の視線を向ければ、


「他のも見てこいよ。向こうにお前の好きそうなのあるぞ?」

と優しく肩を押された。

豪の視線の先にはミルクワッフルと書かれた暖簾が下がっていて。



「...フフ、了解。」

見逃せないので、お言葉に甘える。


甘い物には目がないもん。


「気を付けろ」

ミルクワッフルの屋台に向かう私の背中に掛かる声はやっぱり優しい。


豪は口数が少なくてぶっきらぼうだけど、誰よりも優しい人だね。


私をからかう振りして元気付けてくれてる事を分かってるよ。


だから私は、

「分かってるし、すぐそこだもん」

振り返って笑えるんだ。



ミルクワッフルを購入して、その隣に在ったモチモチ竹輪も購入した。


焼き鳥を買い終えた豪がやって来て、その二つもお金を払ってくれた。

もちろん、お金を私が出す俺が出すと揉めた。



「女に出させる趣味はねぇ」

豪の鶴の一声と、後ろに並んでるお客さんが居たことで、私は引き下がった。


「ありがとう、豪」

買った品物を持って隣を歩く豪に微笑んだ。


「...ああ」

豪は満足そうに頷く。


俺様豪は、いつもフェミニストだ。




車に帰る途中で、自販機の前で立ち止まる。

「飲み物も買ってこ」

「ああ」

「これぐらい私が出すからね」

豪よりも早く財布を取り出してお金を入れる。


「何がいい?」

って聞いたら、

「ブラック」

と視線だけ向けた。


「了解。運転手さんはお茶で良いかな?」

ブラックコーヒーのボタンを押して振り返る。

暑い中、運転を頑張ってくれてるし差し入れしよう。


「ああ、それでいい」

豪の返事を聞いて、お茶のボタンを押した。

自分の分のミネラルウォーターのペットボトルも購入する。


購入したペットボトルを3本抱えて豪の後ろをを歩く。




「うわっ、あの子カッコよくない?」

「ほんとぉ!超好み」

「一人かな?」

「声かけちゃおうか?」


聞こえた声に、豪の後ろから少し覗いてみれば、派手な出で立ちの大学生風のお姉さま達が3人こちらを見てた。


ありゃ、完全に豪狙いだね。

豪君、ロックオンされちゃってますよ。


ってか、自分で言うのもなんだけど、背が低いから大きな豪の影になってて存在を認識されてないみたい。

それはそれで、少し複雑だったりする。