あの日あの時...あの場所で








キングも美夜を振り払ってくれないかな?


やりたい放題させるから、この女が付け上がるんだ。


美夜にくだらない情なんて、掛けてやらなくていいのにさ。


正直、この女、性格最悪なんだからね。


何度か、キングに抱かれた一夜だけの女を苛めてるのを見かけた事あるし。

それに、近付こうとして来る相手にも、キングにバレない様に牽制をかけたりしてんだよね。


キングは基本、何にも興味を示さないから、美夜のやってることも気にかけてない。


いや、キングにとってはどうでもいいことなんだろう。



少し歩いて、入り口近くのメンズショップに入った。


ガラス張りのここからなら、狼王達が来たら直ぐに分かるし、キングの好きなブランドだから丁度良い。


まさに、一石二鳥だろ?



「キング、これはどう?」

自分の趣味を押し付けようとしてる美夜。

その色のTシャツはキングは着ないよ。


「...要らねぇ」

興味なさげに一瞥をくれて、キングは店内を見渡す。


そして、おもむろに歩き出す。


あ、気に入った物が見つかったのかな?


チラリとキングに視線を向けながらも、俺はウィンドウの外へと神経を尖らせる。


狼王達を見逃したくないからね。


しかし、人が多いなぁ?


土曜日で賑わうスーパーに少しうんざりする。






あっ!みぃつけた?


ワクワクした子供の様に微笑んだ。


狼王は大きいからよく目立つ。


ククク...さてどっちの子かな?

狼王の前を歩く女の子二人に目を向ける。


一人はお姉さん系の美人、もう一人は黒髪の大人しい女の子。


近付いてくる狼王達に胸を弾ませながら、キングに声を掛けた。



「キング、良いタイミングがやって来ましたよ」


「分かった」

手に持っていた品物を置くとこちらへやって来る。



「あっ、待ってよぉ、キングぅ」

キングを追いかけてきてその腕に抱き着く美夜。


「...チッ」

気付かなきゃ良かったのに。

小さく溜め息をついた。


店を出てキングの視線は、こちらへ歩いてくる狼王へ。


さすがの狼王もこの人混みでこの距離じゃ避けられないだろ?


俺はキングの隣を満足げに微笑んで歩く。


向こうだって、キングの存在に気付いただろう。


その証拠に、狼王の眉間にシワが刻まれた。