「おねがいします。迷惑掛けてごめんなさい」
咲留の抱かれたまま昂君にお礼を言う。
どうせ、下ろしてもらえないんだから、荷物は頼むしかないし。
「あ...いえ、とんでもない」
ツンツンヘアーのオレンジの髪よりも頬を赤くした昂君は恥ずかしそうに目を逸らした。
ん?どうかしたのかな?
「だ、ダメだからな。瑠樹はやらねぇぞ」
うちの兄貴は何を言ってるんだか?
低い声で威嚇しないで。
「も、もちろんです。そんなんじゃないです」
昂君ビビってんじゃん。
可哀想に。
「咲留、そろそろ行こう」
いつまでもこの場所で晒し者になってんのは嫌だよ。
皆、見てるし退散したい。
「ああ、そうしような」
頷くと再び歩き出した咲留。
落とされちゃ堪らないので、咲留の首に腕を巻き付けて抱き付く。
そしたら、シスコン兄貴は大きな誤解をした。
「そっか、そんなに俺にくっつきたいのか?」
ヘラヘラしてんじゃないわよ。
「......。」
白けた視線を向けたのに、
「もう手離さねぇぞ?瑠樹は俺の側にずっと居ろよ」
なんて甘く囁いてくる。
出来たらさ、その言葉は彼女に言ってあげて欲しいよ。
妹に伝えて良い言葉じゃないと思う。
三年ぶりのシスコンに、大きな溜め息をついたのだった。



