一番欲しいプレゼント【短編】

 あたしと寛は教室を出た。

 そのとき、長い髪の毛を後方で一つに縛った女の子が教室の前を通りかかった。

 彼女はあたしと寛を順に見ると、寛に微笑む。

 朝、寛からお返しを貰っていた子とは別の子だった。

「お返しありがとう」

 彼女は僅かに頬を赤くして微笑んでいる。

 満たされたような笑み。

「いいや。気にしないでよ」

 寛はまた笑顔を浮かべる。

 あたしに向けた、あたしの大好きな笑み。

 あたしは自分にだけお返しがなかったことを思い出す。