見たこともない光景に、お母さんが唖然としたまま呟いた。


あたしは何度か瞬きを繰り返し、そのチラシの1枚を手に取った。


それは不特定多数の家のポストに入れられているようなチラシではなく、1枚1枚ちゃんと住所が書かれているチラシだった。


「これ……全部あたし宛だ……」


2枚3枚と手に取り、確認していく。


そのどれもがあたしの名前が書かれているのだ。


「陽子、お前なにか身に覚えがあるのか?」


お父さんにそう聞かれ、あたしは左右に強く首をふった。


こんなに大量のチラシが届くような覚えはない。


時々通信販売で商品を買う事はあるけれど、玄関中に溢れるほど使用してはいない。


あたしは気味が悪くなり、届いたチラシをすべてゴミ箱へと捨てたのだった。