そっと手に触れてみると、人間らしい柔らかさと温もりを感じた。


「どう? 気にってもらえたかしら?」


藤井さんがあたしにそう聞いてくる。


あたしはほとんど無意識のうちに「はい。とても……」と、返事をしていた。


「それならよかった。昨日は電話に出られなくて、まさか人形を取りやめる電話だったのかしらって、今日はずっと気にしていたの」


「……いいえ、ちょっと気になることがあって電話しただけです」


「気になることって?」


「それも、彼を見てもう解決しました」


あたしはツラツラと嘘を並べた。


この人形を持って帰りたい。


自分だけのものだという欲求が湧いてきている。


「それならよかった。さぁ、陽子ちゃんもスイッチを入れてみてね」


藤井さんにそう言われ、あたしはしゃがみ込んだ。


ブルーのジーンスを捲り上げ、ソックスを下げる。


するとそこに実紗の人形と同じスイッチがあった。


あたしには、戸惑いはなかった。