「本当に動いた……!!」


実紗がそう言うと人形は実紗へと視線をうつし、そして笑顔を浮かべたのだ。


「やぁ、実紗」


人形は滑らか滑舌で実紗の名前を呼ぶ。


「人形にはすでに自分の彼女の情報はインプットされているの。もちろん、顔認識もできるのよ」


藤井さんが得意げにそう話す。


実紗はきゃぁきゃぁ騒ぎながらさっそく彼氏人形に色々と話かけている。


「今度は陽子ちゃんの人形ね」


藤井さんがそう言い、箱に手をかける。


あたしはゴクリと唾をのみ込み、胸の前で手を握りしめた。


段ボールの側面がパタンッと軽い音を立てて地面へと落ちる。


そこに現れた青年にあたしは息を飲んだ。


背が高く、手足が長く、色が白い。


まさに自分が思い描いていた通りの青年がそこに立っていたのだ。


あたしは恐怖心など吹き飛んでしまい、気が付けば人形のすぐ目の前に立っていた。