「けれどね、商店街から戻ってきた女の子は頬がピンク色になってすごく楽しそうに笑っていてね。


つい、『なにかあったの?』って聞いてみたんだ。


そしたらその子は『【ドールハウス】っていうお人形屋さんでオリジナルの人形を注文してきたの』ってね。


それは楽しそうに話していてねぇ」


「それって、どんな子でしたか!?」


運転手さんの話が終わると同時に、恭子さんがそう聞いていた。


「え? あぁ。そう言えばお客さんによく似ているね」


運転手さんは恭子さんの顔をまじまじと見て、驚いたようにそう言った。
信号が青に変わり、車が動き始める。


「それ……きっとあたしの妹です……」


「そうなのかい? いやぁ、よく似ていると思ったよ! 妹さんは元気かい?」


「……妹は少し前に亡くなりました」


「亡くなった?」


運転手さんがけげんそうな表情を浮かべる。


「……はい」


「それは、どうしてだい?」


その質問に、恭子さんは少し考えるように間を開けた。


そして、決心したように口を開き、【彼氏人形】についてのすべてを運転手さんに話はじめたのだ。